第3話 またね!

卒業式が終わって、春休みももう少しで終わってしまうような時期になっていた。桜のつぼみは膨らんで、咲き始めようとしていた。

そんな頃、あなたと2人で遊園地に遊びに行った。4月から違う学校に通うあなたとは、これからしばらく会わなくなってしまうとわかっていた。だから、この恋もこれで最後にしようと思った。時間はどんどん過ぎ去って、気づけばもう夜だった。帰りの電車は、あなたの肩に私の体を預けて、あなたの他愛もない話を聞いていた。これが最後とは思いたくなかった。


「お前と会うのこれで最後だからなー」

「学園祭行くから会うよ」

「最後だからなーー」

「会いに行くってば」

「ね、車の免許取ったら教えてよ。俺をどっか連れてって」


会いたいのか、会いたくないのか。さっぱりわかんない。遅くなったけどホワイトデーのお返し、って言われてもらったお菓子はマカロン。意味は「あなたは特別な人」。


「──もうつくね」


やっぱり、最後にするには少しもったいない。あなたのその寂しそうな声は、私の勘違いではないと信じているから。


「そーだね」

「じゃあ、またね」

「うん、またね!」


あなたはそう言ってにっこり笑う。「じゃあね」でも「バイバイ」でもなく、「またね」って。私、やっぱりまだ終わりにしたくない。そう思いながら、軽やかに駅の階段を上っていった私。単純だな、って笑ってよ。

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