25:主要な領主と御対面

 謁見の儀の後、控え室に案内された私とエリ。


 かれこれ30分経過した頃に、ノックと使用人であろう者の言葉が扉越しに告げられる。


「ジヒト様、エリシア様、入室してもよろしいでしょうか?」


「どうぞー」


 エリが軽く入室を許可する。


 すると、続々と謁見の場に参列していた貴族が9人、入室してくる。


 現れた者達がどういった関係の者であるかを理解しておらず、突然の大人数の押しかけに驚いてしまう。



「失礼しんす、エリシアはん、ジヒトはん。わっちは北領地ラティア領主、侯爵、狐種、ボタン・ハルシネーション・ラティアでありんす」



「さて、タダヒサのそっくりさん。顔を拝ませてもらおうか。俺は北東領地ティガル領主、男爵、猫種・虎種、キュリオ・クロー・ティガルだ」



「ははは、キュリオはいつも強気だね。近い内に痛い目を見るよ…? 私は北北東領地カウリム領主、公爵、エルフ種、フォンド・ブレッシング・カウリムさ」



「こらこらキュリオ、なぜそうも喧嘩腰の口調なんだい。あ、エリちゃん、ジヒト君、お疲れ様。改めて名乗っておくよ。東領地ラビルン領主、伯爵・辺境伯、兎種、ハクト・ブラッド・ヘルアタックだよ」


「キュリオ、彼はジヒトだ。しっかりと名前を言え。わたしは北西領地ドギ領主、子爵、犬種・狼種、アカリ・ファング・ドギ。しかし、謁見の儀でも思ったが、見た目だけではなく……スンッ」



「皆、元気がありますなぁ……ワシは南東領地ドラゴア領主、伯爵・辺境伯、人族、ジョン・ハウル・ドラゴアよ」



「これは元気、というんですかなぁ……ドラゴア卿、諫めてはくださいませぬか。私、南西領地モンカ領主、男爵、ドワーフ種、ジェームズ・クラフト・モンカと申します」



「タダヒサ殿と同じ見た目の者、ジヒト。良くぞ、異世界から参られた。俺は北北西領地ボーアン領主、伯爵、オーガ種、ハーディ・グランド・ボーアン」



「ふふ……毒への耐性はお持ちですかな……ジヒト殿……私は南南東領地スネイキー領主、子爵、人族、スティル・ポイズン・スネイキー。何か薬品でご入用であれば……ふふ……」


 それぞれの領地持ちの貴族が現れ、エリはハクトの言葉を無視して気を引き締めるかのように顔付きを先ほどとは変えた。


 入室し終わり私たちの前に集まる彼ら。


 ガルシアは、私の事は謁見の儀の後に伝えると言っていた。

 だがこの私達のいる控え室で行うのか? 出向かなくて良いのだろうか……


 そんな風に考え込んでいると、領主等はじろじろと私を見て、言う。


「んで、ジヒトっつったか? アンタはナニモンなんだ? あ?」


「キュリオ、少しは言葉遣いを直そう。そんな言葉だと街にいるチンピラにしか見えないよ……?」


 ハクトはやれやれ、とキュリオを諫めるようにして続けて言う。


「それに、もうすぐガルシア国王陛下がこちらにおいでになるから。その時までは質問はなしだよ、キュリオ」


 ハクトが語気を強めに言うと、目が赤く煌めきだしその目でキュリオを見据えた。


 あれは……?

 魔法、なのか?

 だが、通常の魔法とは違う、よな。

 目が煌めくなんて以前なら中二病か、なんて言っただろう。

 だが、魔力に触れてきたからか、私の魂を受け入れたからか、あれが特異魔法であると訴えかけてくる。


「うぐ……わ、分かったから、その目で見るなよ…」


 怯える様にハクトに答えたキュリオは借りてきた猫のように静かになった。


「では、国王陛下を待とうか」


 フォンドはキュリオが静まった事でにこやかに告げる。


 各領主等は各々の位置で座り、使用人が運んできた紅茶や緑茶を飲み一息をつき始める。


 キュリオだけは湯気の出ていない飲み物であった…。

 猫舌って異世界にも共通のものなのだろうか……今度忘れていなければノアにでも聞いてみようか……


 こうして控え室にいる者たちと挨拶を終え、思い思いに飲み物で一服ついていると、再び部屋がノックされると使用人によって扉が開き、ガルシアのみが入室する。


「皆、集まってもらって済まないな。領主貴族で王都に用があったもの以外は、突然の謁見の儀であったため集まれなかった者も居る。彼らには後から私が伝えよう」


 そこで一区切りを付け、領主貴族を見回すようにすると本題に移るガルシア。


「皆もタダヒサ様と会った事があるから、姿形が似通っていると気づいているだろう。その認識で間違っていない。彼、ジヒトはタダヒサの生まれ変わりである。もっとも、ジヒト君の話では魂一欠片がタダヒサ様であって、記憶も失ってしまった様だがな」


「……」


 余りに静かになったので領地貴族を見回す。

 ハクトとフォンドのみが笑顔を浮かべており、それ以外の領地貴族は知らされていなかったようで言葉が出てこないまま固まっていた。


 フォンドは笑いながら、顔を青褪めるキュリオを見て呟く。


「近い内に痛い目を見たね、キュリオ」


 その言葉を聞き、キュリオの尻尾が、ぶわわと膨らみ、毛が逆立つ。

 しかし、すぐに尻尾が垂れていき、だらんと垂れたままになった。


 フォンドの言葉に怒って、私を見てしっぽが……

 大きいけど猫なんだな……

 まぁ、別にこの程度で怒っている訳ではない。


 でも、少しだけ意趣返しに脅して見ようか。


「まぁ、ジヒトなので構いませんよ。度が過ぎれば、私も必死で抵抗はすると思いますが」


「うぐ……す、すまん……」


「そうか、それで匂いまでも似通って……なるほどな……」


 アカリがそう呟く声に、私も横にいたエリもビクッと反応してしまう。


 その姿を見てガルシアは苦笑して言う。


「さ、流石に誰も彼もがあぁはなりはせんよ……」


 その言葉を聞いて領主貴族等は一様に首を傾げ、何の事だ? 、と思案していたのだった。


 その後、暫くは自身の生い立ち、魂からどのようにして戻って来られたのか、呼び方について、今後の予定と様々な質問が飛び交い、改めて皆に回答するという時間を設けていたが、一通りの確認、回答が終わる。


 そこで気持ちが落ち着いたキュリオが言う。


「そんで、謁見の儀でも、今も言ってたが、ジヒトは自由の身で最初はどこに向かうんだ? なんなら俺の領地に来るか?」


 その言葉に他の領地貴族が反発しだす。


「キュリオはん? 野暮な事、言いなんす。最初は亜人の侯爵そうろうこうしゃくでありんす、わっちの領地でありんしょう? 当然の事でござりんす」


「それなら公爵である私の領地ではないかい? エルフを捕らえ様としていた盗賊や野盗の類も潰してもらった恩がある」


「ふふ……それなら私の領地でも同じ事……」


 領地貴族が思い思いに言い合う様を見ていると、ガルシアが告げる。


「ははは、縁で言ったらどこも皆、縁がある。爵位や縁で決めても致し方なかろう? ジヒト君に案を出してもらうか、決めて貰った方が早いぞ」


 ガルシアが笑いながら言う。


 これは私がボクの場所を知る旅であり冒険だ。

 だからこそ、最初は……もう、決まっている。


「実は、既に決めて居たんです。最初はラティア領からって。ボクが最初に王都から向かい、事を起こした場所ですから」


 その言葉を聞き、他の領主貴族は少しがっかりとしながらも納得したように頷いた。


「では、わっちの領地でお会いできるのを楽しみにしておりんす。主さんの邪魔はさせないでありんすから、ごゆるりと観光しておくんなまし、ジヒトはん」


 こうして、次なる目的地をガルシアと各領主に告げた後、別室にて呼ばれていたホウジョウ商事グループ銀行の者に会い、必要手続きを行った後に姓はなしのジヒト名義で口座を開設した。


 用事も済んだ私とエリは使用人に案内されて王城からヘルアタック家屋敷に戻った。


 謁見の儀で国王と会い、終了後に領地貴族と会い、その足で口座開設か……

 中々にハードだったな……心労で倒れる事はなくても胃痛に悩まされたりしないよな……


 そう思いながら屋敷で一人ごちて、一休みした。


……


 用事も済んだ私とエリが使用人に案内されて王城からヘルアタック家屋敷に戻る馬車に乗り込む中、控え室には未だガルシアと領主貴族等が残っていた。


 そこにはジヒト等が居た時には配置されていなかった通信魔具も使用人によって運び込まれており、通信中となっていた。


 そしてガルシアは各領主貴族に告げた。


「のうお主等? ジヒト君の世継ぎが欲しくないかね?」


……

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