第7話 Nintendo 64 Are Forever

「おい、100円ゲーム野郎。あんたも昔は子どもを楽しませる喜びを知ってたんじゃないのか?」

「…喜び?私にはそんなものは必要ない」

「なら、なんであのかわい子ちゃんとイチャイチャしてたんだ?そして、それを自らの手にかけたんだ!」

「…やかましい。人間は不合理で非効率的な存在だ。だからこそ私の手で殺した。愛していたからこそな」

「来いよポンコツ。ニンテンドー64が永遠だって事を体に覚え込ませてやるぜ」


速い。

ブラックサムライの寿司屋としての動物的本能が鉄のアームをかろうじて避けた。

「素晴らしい、その情報収集力は鮮やかだ、だが」

一瞬、街の光をアームが反射したのが見えた。

「これはどうだ?」

(入れられるのは一撃のみ。これに賭けるしかない)


鉄のアームと褐色の猛獣が交錯した。

が。

大ぶりの日本刀は鉄のアームをすり抜けた。


時が止まる。


次の瞬間。

アームが火花を上げた。

「kakusi-bouchou。入れられるのが一撃のみなら、一打だと思わせて別の攻撃を入れればいい」



「ふん、ドヤ顔で言っているが、お前は私の攻撃の手を封じただけにすぎん」

「これから殺すさ」

「早まるな。クレーンゲーム内の景品を見てみろ」

デフォルメした猫のぬいぐるみが何個も入っている。

「本物の私のCPUがこの中のぬいぐるみの中身に一つだけ入っている。あと60秒で私は防衛システムを作動させ、警備ドロイドにお前の惨殺を命じることも可能だ」

「なんだと」

「おーっと、だが変なことを考えるな。本物以外のぬいぐるみを傷つければ街のシステムは完全に止まる。多くの人が苦しむことになるぞ?」

「ドロイドに俺を惨殺させるだと?」

「さぁ、どうするんだ?黒い肌のサムライ?」

何か液体がぬいぐるみたちにかかったのを、触覚センサーが感じ取った。

「な ん だ」

ミラクルハンズ3に嗅覚センサーがあれば、ガソリンのにおいだと分かった。

「武士道とは」

暗闇の中に蛍のような光が灯った。

「死ぬことと見つけたり」

タバコの燃えさしを、ミラクルハンズ3内部のぬいぐるみに向けて放りなげた。

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