第5話 three mirrion bamboos

ーーカポン。


ししおどしが鳴った。

ブラックサムライは寺で瞑想を行っていた。

「客人を連れてきたか」

声がする。

「和尚」

累帆洲茶柱(るいぼすちゃばしら)。分福寺の僧侶である。

「客人とは?」

「あんたがー。店に残した人のことさ。」

「…何のことだか…」

目を背ける。

「その者は輪っかのようになっている。それが鉄の輪っかになってあんたにはまるかもしれんぞ」

遠くで蝉の鳴く声がする。

「ではどうすれば?」

「仏教にはdharma wheelという車輪がある。法の教えを護ることで煩悩を打ち砕くといわれている。どれ、私が一つ話をしよう」

茶柱は2、3度頷き、サムライを見る。

「鉄の爪の元へやって来る小鹿を捕まえろ…。そう言っとるな」

「小鹿…。」

「左様。どう解釈するかは任せよう」

茶柱は踵を返し立ち去ろうとする。

「和尚」

立ち止まる。

「酒臭いですが、朝からウイスキーですか?」

「修行に役立つ知恵を求めておるのだ。般若湯もほどほどにせにゃならん」


割れた般若の面の中身にフィリップは見覚えがあった。

からくり伊右衛門。

戦闘用スーツを開発し米国へ輸入し続け、貿易摩擦を作った彼の名だ。

当初は米軍が購入し続けたがAIとドローンを駆使して戦争が扱われる中で、人間が中に入るタイプの戦闘用スーツは不要であるとし、一時期から購入されなくなった。

当時の国防長官の言葉を引用する。

「私たちにはガンダムは不要だ」


フィリップは彼を追ううちにモールを離れ、裏にある山へと誘っていた。

「伊右衛門!会話をしよう!」

後ろ姿がだんだんと大きくなる。

「君に金がいるというのはわかる。私たちにも何かサポートできるかもしれない」

伊右衛門はガードレールを飛び越えた。

まさか。

そのまま真っ逆様に落下する。


「jesus」

神の名を口にしたその直後、

巨大がすがたを現した。

Automata for Massacre Almighty Mode

全対応殺戮自動人形 通称:AMAM(あむあむ)


カマキリとダンゴムシを組み合わせたような姿で、メタリックブルーの塗装がされている。

首を傾げたその姿にはどこか可愛らしさも感じる。

「kawaii…。」

呟いた瞬間、AMAMの腕が前に振られると、

ガードレールが真っ二つとなる。

ノイズの混じった声が聞こえる。

「可愛いって言葉が似合うのはてめぇの骸だけだぞ?」

「wait,wait,wait,wait,wait,wait,wait!」

フィリップは来た道を引き返し、脇にある竹林へ入っていく。

滑り落ちながら竹と竹の隙間を入っていくと、そのうしろから竹を飛ばすようにAMAMが斬り裂いていく。

「軍事産業より第二次産業に売った方がよかったな」

フィリップが螺旋を描くように逃げながら軽口をたたく。

その最中に切られた竹を手に取り、AMAMの股の間に滑り込み、登り棒のように竹を登る。

「早く出てこい!」

「出てくるよ」

握った竹に体重をかけ、しなった後上空へと放り出される。

見上げたAMAMへ向けて竹槍で貫く。

AMAMは火花が2、3個散ったあとでガクリと項垂れる。

「こんな時代ともなると竹槍でロボットを壊せるとはね」

「オートマタだ!」

中から伊右衛門が叫ぶ。

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