第4話 『屋上で告白タイム』
昼休みの屋上。
爽やかな風が頬を撫で、遠くで体育の授業らしき声が響いている。雲ひとつない青空を見上げながら、悠真はフェンスにもたれかかった。
「……はぁ、やっと一人になれた……」
ここ最近、千明の“当たり屋ムーブ”に振り回され続けていた。
少し静かに過ごしたい。
しかし、その願いは儚くも崩れ去る。
「やっほー、悠真♪」
「……やっぱり来たか」
振り返るまでもなく、声の主は分かっていた。千明だ。
「えー、ちょっと! もうちょっと驚いてくれてもよくない?」
「いや、もう慣れたからな……」
「ふふっ、それってつまり……?」
千明はじりじりと距離を詰めてくる。悠真は一歩後ろに下がるが、屋上のフェンスに阻まれた。
「私の存在が悠真の生活に溶け込んできたってことだよね?」
「違う。単に俺のスルースキルが上がっただけだ」
悠真は淡々と答えるが、千明は満足げに微笑む。
「ねえねえ、せっかく二人きりなんだし、そろそろ告白タイムじゃない?」
「なんだその謎の時間は」
「ほら、屋上って“告白の聖地”じゃん? ここで告白したカップルは必ず結ばれるらしいよ?」
「誰情報?」
「うーん、私の直感!」
「お前の根拠ゼロの伝説に巻き込まれるのは勘弁なんだが」
悠真は額を押さえてため息をつく。
「じゃあさ、悠真から私に告白するってのは?」
「しない」
「じゃあ私が悠真に告白する!」
「やめろ」
「悠真、大好き!!」
「聞けよ!?」
悠真の叫び声が屋上に響き渡る。
しかし、千明は満足げに笑っていた。
「ふふっ、やっぱり悠真のリアクション、最高だなぁ」
「……お前、本当に俺で遊ぶの楽しいんだな」
「うん! でもそれだけじゃないよ」
千明はふっと真剣な表情を見せる。
「悠真、前より私のことスルーできるようになってきたけど……でもちゃんと、私の話を聞いてくれるよね?」
悠真は一瞬、言葉に詰まる。
「……まあ、一応な」
「それってつまり、私のこと意識しちゃってるってことじゃない?」
「……はぁ……もういい、好きにしろ」
悠真は諦めたように天を仰ぐ。
(……マジで、この女には敵わねぇな……)
頬をなでる風が、どこか心地よかった。
千明の当たり屋ムーブは、今日も悠真を翻弄し続けるのだった。
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