第23話

流衣SIDE




 

「お前、マジで殺っちまうぞ!?」

 

「勃つならどうぞご自由に。」

 

「そっちのヤるじゃねえんだよ!バカか!!お前なんかお金積まれても絶対ヤらねえわ!!」

 

「良かった、殺されないのね。」

 

「そっちの意味じゃねえよ!ヤらねえっつーのは殺らないってことで…ん?どっちだ?」

 

「分かんなくなってやんの~!」

 

「お前のせいだろうが!!!」

 

 

 

 

俺の目の前で繰り広げられる言い合いに、思わず吹き出しそうになるのを我慢して二人の間に入り止める。

 


 

見上げてくる椿のレンズ越しの瞳に、これ以上は踏み込むなと目で合図を送った。

 


俺にだけ分かるように小さく口角を上げる。

 

 


 

「流衣離せ!こいつ一発殴らせろ!」

 

 


 

暴れる大河の首根っこを掴んで引きずるようにして扉を横に引く。

 

 


 

「先生ありがとうございました。失礼します。」

 

 


 

そう声を掛けて、「はーい。」と手を振りながら見送る椿から顔を背けたと同時に扉が自動でゆっくり閉まった。

 

 

 

大人しくなった大河と並んで歩いていると、帰っていく生徒達から浴びる視線に溜息をつく。

 



チッと舌打ちを鳴らした大河は、眉間に皺を寄せて何やらまだイラついている様子にフッと笑った。

 

 

 

 

「大河が女相手にムキになるなんて初めてじゃないか?」

 

「あれは女じゃねえ!」

 

「ハハハッ!」

 

「ていうか、お前も何であんな女に構うんだ?」

 

「構ってない。薬もらっただけ。」

 

「まさか毒入ってねえだろうな?」

 

「そんな訳ないだろ。」

 

 

 

俺に擦り寄ってくる椿を思い浮かべながら、苦笑いで返す。


 

屋上のドアを引いて開ければ、フェンスの中央でこっちを睨みつけてくる俺らのトップ、玲央がいた。

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