第20話

始業式も終わり自分のテリトリーの保健室へと足を踏み入れると、すぐに後ろから入ってきた足音に振り返る。

 

 


 

「流衣!」

 

「ハハッ、やっぱり椿だったんだ。」

 

「どう?この変装。」

 

「全然分からないけど、何もそこまでしなくても。」

 

 


 

髪はひとつに後ろで束ねて、度の入っていない分厚いレンズの銀縁眼鏡をかけている私。

 



そんな私の格好は白のブラウスにあずき色の薄い大きめのカーディガン、そして黄色に近い茶色の膝下まであるスカート。

 


どれも本当のサイズより全部2サイズ大きいものだ。

 

 

上にこれまた大きめの白衣を羽織れば、見事体型は隠れてしまう。

 

 

これでダサダサコーデの完成でございます!

 

 

 

 

「いや~、するならとことんしないと気が済まない性格でして。」

 

「まあ、あんまり保健室って来ないし、行事だけ気をつけてればいいから。」

 

「うん。全力でダサダサコーデを極めます!!」

 

「なんか違う方向に行ってない?」

 

 

 

 

苦笑いする流衣に楽しげに笑い返せば、ずり落ちてくる眼鏡を両手で掛け直す。

 


するとそこに、勢いよく横引きの扉が開き、流衣と同じタイミングで目を向けた。

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