第10話
「じゃあ僕が捨ててあげるね」
酷く優しく。
気遣わしげに。
「だけどもし、“必要”になったらその時は、買いに行くの付き合ってあげるよ」
「……え?」
「って、まあ知らない奴にそんな事言われてもビビるだけかもしれないけど。もし本当に“必要”になったらだから」
「で、でも――」
「だから今はこんなの見なくていいように、僕が捨ててあげる」
はっと、息を止める。
見なくていい。
聞かなくていい。
他人にそう言われたのは初めてで。
ぱちん、耳の奥で何かが弾けた音がした。
―――彼は、とても美しい。
人間、だろうか。
そんな馬鹿らしい考えすら浮かんでしまう程に。
「あ、りがとうございます」
その瞬間、全て許されたような気になった。
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