## パート12: 鉱脈の守護者:クリスタルゴーレム
壁の亀裂を慎重に通り抜けた先は、僕たちの想像を遥かに超えた空間だった。
広大な、ドーム状の空洞。その天井や壁には、夜空に浮かぶ銀河のように、無数の鉱脈が走っていた。鉱脈そのものが淡い青白い光を放ち、足元の地面に散らばる結晶の破片も、僕たちの歩みに合わせてキラキラと繊細な輝きを反射する。
「うわぁ……!」
「きれい……ぷる……」
ゴビーもぷるなも、思わず感嘆の声を漏らす。無理もない。まるで星空の中に迷い込んだかのような、幻想的で、荘厳でさえある光景だ。ここが、月光銀の鉱脈……。苦労して辿り着いただけの価値はあった。
しかし、その感動に浸っていられたのは、ほんの一瞬だった。
僕の視線は、空洞の中央――ひときわ大きな月光銀の結晶体が林立する場所――に釘付けになった。何かが、いる。
最初は、巨大な水晶の塊かと思った。周囲の月光銀と同じように淡い光を放ち、風景に溶け込んでいたからだ。だが、それがゆっくりと、ぎしり、と音を立てて動き出した時、僕たちはそれが自然物ではないことを悟った。
全長3メートルは超えるだろうか。全身が磨き上げられた水晶(クリスタル)のような、半透明の鉱石で構成された巨大な人型。関節部分はより強い光を放ち、魔法的な力で稼働していることを示唆している。その体は、周囲の月光銀の光を吸収しているかのように鈍く輝き、そして時折、体表で光が不規則に反射し、チカチカと目を眩ませる。
(ゴーレム……? いや、これは……クリスタルゴーレム!)
石でできていた昇格試験のゴーレムとは、明らかに格が違う。あの時の石のゴーレムでさえ、僕たちは三人掛かりでギリギリの戦いを強いられたのだ。こいつは、それ以上……?
クリスタルゴーレムが、完全にこちらを認識したように、その頭部(らしき部分)を動かした。コアのようなものは見当たらない。弱点はどこだ? いや、それ以前に……。
ズシン、と空気が震えるような威圧感。本能が警鐘を鳴らす。こいつはヤバい。下手な攻撃は通用しないどころか、即座に反撃されて終わるかもしれない。
「ボス……こいつ、強い……ゴブ」
ゴビーが、珍しく警戒心を露わにして呟く。
「……こわい……」
ぷるなも僕のマントを強く掴み、小刻みに震えている。
間違いない。こいつが、この月光銀の鉱脈を守る守護者だ。そして、僕たちがEランクになって初めて相対する、真の「中級」の脅威。
これを倒さなければ、月光銀は手に入らない。そして、ボルガンさんに認めてもらうことも……。
(やるしかない……!)
僕は短剣を強く握りしめ、ゴーレムを睨みつけた。恐怖はある。だが、ここで引き返す選択肢はない。僕たちの成長を、絆を、そして覚悟を示す時だ。
「ゴビー、ぷるな、作戦を立てる。落ち着いて聞いてくれ」
僕は二人に視線を送り、迫りくる脅威を前に、冷静さを保とうと努めた。
幻想的な光に満ちた美しい空洞で、僕たちと鉱脈の守護者との、避けられない戦いの火蓋が、今、切られようとしていた。
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