## パート10: 想定外の脅威:卑劣な妨害
「事故に見せかけて潰してやる!」
痩せた男が唾を飛ばしながら言い放つ。小太りの男も、手に持った棍棒をいやらしく回しながら、にやついている。二人で僕たちをここで排除するつもりらしい。試験のルールなど、端から守る気はないようだ。
(……舐められたものだな)
だが、ここでやり合うのは望むところではない。時間も惜しい。短期決戦で終わらせる!
「ゴビー、撹乱! ぷるな、俺の合図で足元を!」
僕は即座に指示を飛ばし、小太りの男へと意識を集中する。
「おうよ!」
ゴビーは弾かれたように駆け出し、痩せた男へと襲いかかった。痩せた男は短剣を構えるが、ゴビーの縦横無尽の動きに翻弄され、防御一方になっている。
よし、まずは一体! 僕も小太りの男との距離を詰める!
「でやぁっ!」
小太りの男は見た目に反して動きが重く、しかしパワーのある棍棒の一撃を繰り出してきた。僕は短剣でそれを受け流すが、腕にずしりと重い衝撃が走る。
(こいつ、見かけによらず力が強いな……!)
受け流した隙を突き、男の脇腹へ短剣を走らせる! だが、男は革鎧でそれを防ぎ、にやりと笑う。
「そんな豆鉄砲みてえな攻撃が効くかよ!」
再び棍棒が横薙ぎに襲いかかる! 僕はバックステップでそれを回避。その時だった。
「くらえ!」
ゴビーと打ち合っていたはずの痩せた男が、こちらに向かって何か小さな袋のようなものを投げつけた! 袋は僕たちの足元で破裂し、もくもくと濃い灰色の煙が辺りに立ち込める!
「なっ!? 煙幕!?」
しまった、小細工を使ってくるとは! 視界が一気に奪われる!
「ゴビー! ぷるな! 無事か!?」
返事はない。煙で咳き込む音だけが聞こえる。
まずい! 視界が悪い! 敵の位置は――
「もらったぁ!」
煙の中から、突如として小太りの男の巨体が現れ、棍棒を振りかぶって僕に突進してきた! 速い! 回避が間に合わない!
(くそっ……!)
僕が咄嗟に腕で頭を庇った、その瞬間だった。
「いやぁぁっ!」
悲鳴のような、しかし強い意志のこもった声が響いた。ぷるなだ!
彼女は僕の指示を待つことなく、突進してくる小太りの男の足元、その先の通路まで含めた広範囲を、一瞬で深くて粘度の高い泥濘に変えたのだ!
「な、うわっ!? ぐえっ!」
勢いよく突っ込んできた小太りの男は、足元の異変に対応できず、もんどりうって派手に転倒! 運悪く近くの岩に頭を強打したらしく、白目を剥いて動かなくなった。
(ぷるな……!?)
僕は呆然とした。指示もしていないのに、この状況で、的確に、しかも広範囲に能力を発動させた?
煙が徐々に晴れていく。ゴビーも咳き込みながら、煙の中から姿を現した。そして、痩せた男は、目の前で相棒があっけなく倒されたことと、ぷるなの予想外の能力に驚愕し、完全に動きが止まっていた。
「な……なんだ、今の……」
その隙を、ゴビーが見逃すはずがなかった。
「ゴブッ!」
獣のような短い咆哮と共に、ゴビーは痩せた男の背後に音もなく回り込み、その首筋に手刀を叩き込んだ! いや、よく見ると爪が僅かに伸びている? ゴブリン由来の麻痺爪か何かか? 男は「ぐっ」と短い呻き声を漏らし、崩れ落ちるようにして気絶した。
あっという間の出来事だった。卑劣な煙幕に一時はどうなるかと思ったが、ぷるなの機転と、ゴビーの容赦ない一撃によって、僕たちは格上と思われた二人組を、ほとんど無傷で戦闘不能に追い込んだのだ。
「……やった、のか?」
僕が呟くと、ゴビーは「へへん!」と得意げに胸を張り、ぷるなはまだ少し怯えながらも、僕を見てこくりと頷いた。
「よーすけ……まも、れた……?」
「ああ、ぷるなのおかげだ! すごいぞ! よくやった!」
僕は彼女の頭を撫でた。怖かっただろうに、咄嗟に僕を守ろうとしてくれた。その勇気と成長が、何より嬉しかった。
壁際では、罠にかかったままの一部始終を見ていたリーダーの男が、信じられないものを見たかのように顔面を蒼白にし、わなわなと震えていた。
「ば、化け物……てめえら、人間じゃねえ……!」
彼は恐怖と怒りに任せて何かを叫んでいるが、僕たちはもう相手にしなかった。気絶した二人も放置だ。自業自得だし、試験が終わればギルドが回収するだろう。
「行くぞ。先を急ごう」
僕は仲間たちを促し、忌々しげなリーダーの罵声を背に受けながら、再び洞窟の奥へと歩き出した。卑劣な妨害は打ち破った。だが、試験はまだ終わっていない。僕たちは、この勝利で得た達成感と、改めて感じた仲間の頼もしさを胸に、気を引き締め直した。このチームなら、やれる。そう確信しながら。
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