## パート13: 次なる挑戦

あの温かいシチューの夜から数日。僕たちの手持ちの資金は、宿代と最低限の食費でみるみる減っていった。安らぎは心地よかったが、それだけでは生きていけない。冒険者として稼ぎ、そして、もっと強くならなければ。


「ゴビー、ぷるな。ちょっとギルドに行ってくる」

僕は立ち上がり、二人に向かって言った。

「次の仕事を探してくる。二人とも、ここで待っててくれ」

「やだ! ゴビーも行く! ゴブ!」

「ぷるなも……よーすけと、いる……」

予想通り、二人ともついて来たがった。特にぷるなは、僕から離れるのがまだ不安なのだろう。ゴビーも、僕だけで行かせるのは心配なのかもしれない。

「……分かった。じゃあ、三人で行こう。ただし、ギルドではおとなしくしてるんだぞ」

結局、僕たちはまた三人連れ立って、冒険者ギルドへと足を運ぶことになった。


ギルドの中は、やはり僕たちが入ると一瞬静まり、好奇と侮蔑の入り混じった視線が集まる。もう慣れた、と言えば嘘になるが、前回よりは冷静に対処できた。僕は動じずに依頼掲示板へと向かう。


掲示板には様々な依頼が貼られている。薬草採取のような簡単なものから、高ランク向けの魔物討伐まで。僕が探すのは、今の僕たちでもなんとか達成できそうで、かつ前回よりは少しだけ難易度が高いもの。


「……これか」

僕の目に留まったのは、一枚の依頼書。「近郊の廃坑にゴブリンが少数、巣食っている模様。討伐を依頼する」。報酬は銅貨にしては悪くない。

ゴブリンか……。僕はちらりと隣にいるゴビーの顔を見た。彼女の同族(だったもの)を討伐するというのは、どうなのだろうか。


依頼書を見つめるゴビーの表情が一瞬、僅かに曇ったのを僕は見逃さなかった。だが、彼女はすぐに顔を上げ、僕に向かってはっきりとした口調で言った。

「ゴブリン……やる! ゴビー、やる! ゴブ!」

その目には、葛藤を乗り越えたような、強い意志が宿っているように見えた。彼女なりに、覚悟を決めているのだ。


「……ゴビー、本当にいいんだな?」

僕は念のため、小声で確認した。ゴビーは力強く頷く。

「うん! ボスと、ぷるなと、一緒! ゴブ!」

「……そうか。分かった」

僕はゴビーの決意を受け止め、その依頼書を手に取った。そして受付カウンターへ向かおうとした、その時だった。


「おいおい、マジかよ。Fランクのお前がゴブリン討伐だって?」

背後から、揶揄するような声がかかった。振り返ると、そこには傷だらけの革鎧を着込んだ、見るからにガラの悪い三人組の冒険者が立っていた。前回とは違う連中だが、僕を見る目は同じように侮蔑に満ちている。


「しかも、なんだそのチビどもは。お守りでもしながら戦うつもりか? 死にてえのか?」

リーダー格らしい髭面の男が、僕だけでなくゴビーとぷるなを嘲るように見下ろす。ぷるなは怯えて僕の後ろに完全に隠れてしまった。


カチンときた。僕のことだけならまだしも、ゴビーやぷるなまで馬鹿にするのは許せない。だが、ここで感情的になっても仕方がない。僕は怒りをぐっと喉の奥に押し込み、努めて冷静に言い返した。

「……どう戦おうと、俺たちの勝手です。あなた方には関係ない」

「あぁ? 口の利き方には気をつけろよ、クソガキが」

男は凄むが、僕は視線を逸らさずに続けた。

「依頼を受けるかどうかはギルドが決めること。文句があるなら、ギルドに言ったらどうですか?」


僕の予想外に冷静な(あるいは少し挑発的な)態度に、男は一瞬言葉に詰まったようだった。周りの他の冒険者たちも、遠巻きにこちらを見ている。ここで騒ぎを起こすのは得策ではないと判断したのか、男は「……ふん、どうなっても知らねえぞ」と吐き捨てると、仲間と共に去っていった。


僕は小さく息をつき、改めて受付カウンターへと向かった。受付嬢は一部始終を見ていたようだが、特に何も言わず、淡々とゴブリン討伐依頼の受注手続きを進めてくれた。依頼書と、廃坑の簡単な地図を受け取る。


「……よし」

ギルドを出て、僕は改めてゴビーとぷるなに向き合った。

「次の仕事は、廃坑でのゴブリン討伐だ。前の森狼より手強いかもしれない。危険な仕事になる。それでも、一緒に来てくれるか?」

ゴビーは力強く頷いた。「ゴビー、ボスと、ぷるなと、一緒なら、大丈夫! ゴブ!」

ぷるなも、まだ少し怯えながらではあったが、僕の服を掴む手に力を込め、こくりと頷いた。


三人の間に、新たな挑戦へ向かう決意が確かに共有された。僕たちは、廃坑の地図を頼りに、次なる戦場へと備えるため、宿への道を急いだ。


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