シーン2:森を抜けて、初めての異世界都市へ

承知いたしました。それでは、第1章シーン2の執筆を続けます。


シーン2:森を抜けて、初めての異世界都市へ


森の中を歩き始めて、どれくらいたっただろうか。

太陽の位置から察するに、まだ半日も経っていないはずだが、見慣れぬ景色の中を進むのは思った以上に精神的に疲れる。まあ、肉体的には全く疲れていないのだが。これもステータスのおかげか。【無限収納】に放り込んでおいた、どこかの木になっていた果物(鑑定済み。名称:ミズミ果実、効果:水分補給、味:まあまあ)を齧りながら、俺はひたすら鑑定スキルを頼りに進んでいた。


(鑑定:進行方向の地形)

→【緩やかな下り坂。約500メートル先で開けた場所に出る可能性:中】


(鑑定:周囲の気配)

→【小型の生物反応:多数。敵意のある反応:少数(低脅威度)】


この【鑑定・解析】スキルは本当に便利だ。ナビゲーション代わりにもなるし、危険察知もできる。おかげで、今のところ迷うことなく、厄介な獣やモンスターとの遭遇も避けられている……と思っていた矢先だった。


前方の茂みがガサガサと揺れ、緑色の粘液状の塊がぬるりと現れた。大きさはバスケットボールくらい。ぷるぷると震えながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。


「……うわ、出た」


(鑑定)

名称: グリーンスライム

種族: スライム種

レベル: 1

HP: 30/30

MP: 5/5

特徴: 最弱クラスのモンスター。物理攻撃は効きにくいが、核(コア)を破壊されると消滅する。火に弱い。

脅威度: G(極低)


最弱クラスね。見た目通りのようだ。

スライムはゆっくりとした動きで、俺に向かって体当たりを仕掛けようとしている。…いや、遅すぎだろう。時速1キロも出ていないんじゃないか?


普通なら剣か何かで戦うのだろうが、生憎そんなものは持っていない。まあ、必要ないだろうけど。

試しに、そこら辺に転がっている石ころを拾い上げ、スライムに向かって軽く放ってみる。ステータス500の筋力で投げた石ころが、どれほどの威力になるのか。


ヒュンッ!


軽い音とともに、石ころは空気の壁を突き破るかのような勢いで飛んでいき――スライムのいた場所に、ドンッという鈍い音を残して地面にめり込んだ。スライム? ああ、跡形もなく消し飛んだようだ。核ごと粉砕されたらしい。


「……加減って難しいな」


思わず乾いた笑いが漏れる。レベル1のスライム相手に、これはオーバーキルすぎる。こんな調子じゃ、今後まともに戦える気がしない。いや、戦う必要がないと言うべきか。ますます目立たないように生きるのが難しくなりそうだ。


(面倒くさい……)


心の中で何度目かになる溜息をつきつつ、再び歩き出す。

その後も、数匹のゴブリン(鑑定結果:脅威度F、これも弱い)に遭遇したが、デコピンで吹き飛ばしたり、足元の小石を蹴り飛ばして一掃したりと、戦闘と呼ぶのもおこがましい方法で難なく処理した。この異常な身体能力にも、少しずつ慣れてきた自分がいる。


鑑定が示す通り、やがて森の木々がまばらになり、視界が開けてきた。

そして――見えた。


「おぉ……」


思わず感嘆の声が漏れる。

森を抜けた先、緩やかな丘の下に広がる平野。その中心に、立派な石壁に囲まれた大きな街があった。中世ヨーロッパ風の、赤茶けた屋根の家々が密集し、中心にはひとき Tanıkい塔のような建物も見える。壁の外には畑が広がり、街へと続く街道には、荷馬車や人の姿もちらほらと確認できた。ファンタジー世界でよく見る、典型的な城壁都市だ。


(鑑定:あの街)

名称: 商業都市リューン

規模: 中規模都市

特徴: 複数の街道が交わる交通の要衝。商業が盛んで、様々な種族が集まる。冒険者ギルド支部あり。治安は比較的良好。

現在地からの距離: 約3キロメートル


冒険者ギルドもあるのか。これは都合がいい。情報収集や当面の生活費を稼ぐには、冒険者になるのが手っ取り早いだろう。目立ちたくないとはいえ、無一文では生きていけないしな。


俺は丘を下り、街道へと合流した。

土埃の舞う街道を、様々な人々が行き交っている。屈強な鎧姿の男たち、ローブを纏った魔術師風の老人、荷物を満載した馬車を引く商人、質素な服の農民らしき人々。獣の耳や尻尾を持つ「獣人」と呼ばれる種族や、小柄で頑強そうな「ドワーフ」と思しき姿も見える。本当に異世界なんだと、改めて実感させられる光景だ。


彼らが話している言葉も、俺にはごく自然な日本語として聞こえる。これが【言語理解】の効果か。試しに、すれ違った行商人に「こんにちは」と声をかけてみると、「おう、こんにちは。旅の方かい?」と気さくな返事が返ってきた。よし、コミュニケーションは問題なさそうだ。


やがて、巨大な城門が見えてきた。高さは10メートル以上ありそうだ。門の両脇には、槍を持った兵士が数人ずつ立って、出入りする人々をチェックしている。


(さて、問題はここだな……)


身分を証明するものは何もない。怪しまれるのは必至だろう。どう切り抜けるか。正直に「記憶喪失で……」とか言ってみるか? ベタすぎるか?


考えながら列に並び、自分の番が来た。

厳つい顔つきの門番が、俺の身なりを上から下までジロリと見て、尋ねてきた。


「身分証は持っているか? それと、どこから来た?」


「ええと……それが、森で道に迷ってしまって。持ち物もほとんど失くしてしまい、身分を証明するものも……。名前はカイと言います。どこから来たのかも、正直よく覚えていなくて……」


我ながら苦しい言い訳だ。だが、嘘は言っていない……部分的に。

門番は眉間に皺を寄せ、訝しげな視線を向けてくる。


「記憶がない、だと? よくある手だが……。まあいい。武器の類は持っていないな?」

「はい、何も」

「ふむ……。怪しいところはないようだな。よし、通っていい。だが、街中で問題を起こすなよ。それと、早めにギルドか役所で身分証を発行してもらうんだな。ないと何かと不便だぞ」


意外にも、あっさりと通してくれた。これも【幸運MAX】のおかげだろうか? それとも、こういう流れ者が珍しくないのか。どちらにせよ、助かった。


「ありがとうございます」


礼を言って門をくぐる。

門の内側は、外から見た以上に活気に満ちていた。石畳の道、軒を連ねる店々、行き交う人々の喧騒。革製品の匂い、香辛料の香り、家畜の匂い……様々な匂いが混じり合って、異世界に来たという実感を強くさせる。


「まずは……冒険者ギルド、だな」


俺は、これから始まるであろう波乱万丈(できれば避けたい)な異世界生活の第一歩を、この商業都市リューンで踏み出した。


ここまでがシーン2となります。

森を抜け、最初の街「リューン」に到着しました。道中での小規模なモンスターとの遭遇と、門番とのやり取りを経て、無事に街へ入ることができました。


次は、冒険者ギルドへ向かい、登録を行うシーン(シーン3)に進みますか?

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