40.反撃です

「ふにゃふにゃ……ん……? んん……、えぇ……!?」


 流石に目覚めましたか…………ホムラ……。


「う、うわっ……こ、これってどういう!?」


 ホムラは慌てて、私から手を放し、極めて迅速に正座状態へと移行する。


「どういうって……ホムラ様、随分とその……お愉しみでしたよ?」


「っ……!? も、申し訳ありません……何も……何も覚えていないのです!」


「ホムラ様、構いません……。愛宿ここはそういう場所ですよね?」


「えっ……? あ、まぁ……確かにそうだとは思いますが……」


 よかった……。

 なんとか世間知らずであることは、バレていない……はず。


 これまではホムラにさんざんやられたから、今度はこちらから反撃の時間です。

 薄い書物シン・ヒストリカルレコードに記されていたスキルで……!


 下準備として、まずはホムラの衣服を脱がします。


「え……? リリさん……? ちょ……」


 ふふ、動揺しているようですね。


 神を……神を舐めないでください……!


 〓〓〓自主規制〓〓〓


「ちょ……リリさん、そ、そのくらいに……!」


「はひ……?」


 ホムラが一度、私をぐいっと引きはがす。


「いくら安心料とはいえ、こんなことは……」


 っ……!?


 ホムラが嫌がっている?


 薄い書物シン・ヒストリカルレコードに記されていた男性は愉悦ゆえつの表情を浮かべていたというのに?


 そ、そうか……。本来、叡智とは愛を深めるための行動。


 私はホムラ側の意向を無視していたということ……!?


「ご、ごめんなさい……。その……私……一方的に……」


「あ、いや……その……私だって、神への冒涜ぼうとくをするつもりはないのですが……」


 か、神への冒涜ぼうとく!?


 こ、このお方……私を神と……き、気づいている……!?

 な、なんという……。


「でもですね、やっぱりこれ以上は安心料としては、いくらなんでも高すぎると思うのですよ。これじゃあ、ぼったくりですよ」


 そう言って、ホムラはぎこちなく微笑む。


 …………確かに、私はきっと愛というものに鈍感です。


 本質的に何なのか……分かってはいないかもしれません。


 でも……、分からないけれど、


 確かに、今日の強盗の事件で、胸の辺りがおかしくなるのを感じたのです。

 だけど、それはただのきっかけで、本当はその前から……。


 ホムラはいつも感謝をしてくれた。


 スキルを与えた後、地球人はそれを自分自身の才であると捉えることが多い。

 実際にそうであるから、そう思うことが間違っているとは思わない。

 だけど、そんな中で、ホムラはスキルを使う度に感謝してくれた。

 何度も何度も……感謝してくれた。

 だから……気づけば、彼を覗いている時間が増えていたのかもしれない。


「……ホムラ様なら構いません」


 気が付くと、そんな言葉を発していた。


「ありがとうございます」


 ホムラがまた感謝の言葉を口にしてくれる。

 この言葉だ。

 この言葉が私を変にする。


「でも、その気持ちならやめた方がいいですよ」


 え……?


「ホムラ様……そ、それはどういう……?」


「こういうことは、〝誰々だれだれなら構わない〟じゃなくて、〝誰々だれだれがいい〟って気持ちじゃないとダメだと思いますよ」


 ……!?


「ご自身を大切にしてくださいね」


 ッッ――――!


「それじゃあ、おやすみなさい」


 ホムラはくるりと向こうを向いて、横になってしまった。


 …………。


 あぁ……、どうしたことでしょう……。


 ホムラ……。


 きっと、たった今、〝なら構わない〟じゃなくて、〝がいい〟に変わりました。



======

【あとがき】

据え膳食うは男の恥……!?


一応ですが、ホムラはリリを神と気づいていません。

ホムラがなぜ「神への冒涜ぼうとくをするつもりはないのですが……」と言ったかについて気になる方は、もしよければ『24.おかげで生物は数を増やしてきました』をご参照いただければと思います。


次話は多分ちゃんと鍛冶師を探しに行きます。

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