27.一応、私有地です
八日目朝――。
ぱちっ!
(おっ、朝か……)
その日、ホムラは三日ぶりにユグハがくっついていない朝を迎えた。
(モフォル毛の布団……こ、これはいいな……。柔らかくてふんわりと身体を包み込み、一方で適度な反発力もある。硬い床に敷いたから、身体が痛くならないかちょっと心配だったけど、全然、大丈夫だったな。モフォルのぬくもりをそのまま織り込んだような毛布で、一晩中ぐっすりと眠ることができたなぁ)
などと、ホムラは考える。
まぁ、ホムラは床でも一晩中起きることのないタイプの人間であるが……。
昨晩は新調した二つのモフォル毛の布団でそれぞれホムラとユグハが寝て、ベッドでノノンが寝ることになった。
ノノンは寝る必要もないけど、寝ようと思えば寝れるし、気分的に寝るということで、昨晩は眠りについたのであった。
「うりゅりゅ……」
(ふふ…………ユグハはまだ
ホムラはこっそりとユグハの身体のサイズ感を確認する。
(あれ……? ユグハ、昨日からそんなに変わってないな……)
昨日、モフォルの毛を一部拝借して、サイズアップした服が今朝もちゃんとフィットしていたのだ。
(今日、たまたまかもしれないから、明日以降も推移を見守っていく必要があるな……)
などと思いつつ、
(さて……今日は……)
◇
「すまない、今日は仕事があり、私は一日中、家の中だ。なるべく早く終わらせるつもりだけど、ひょっとしたら数日かかるかもしれない」
昨晩、会社勤め時代の後輩であった
「うりゅ!」「承知です」
「というわけで、二人は自由に過ごしていいからな」
「うりゅ!」「承知です」
そうして、ホムラは部屋で地球での仕事をこなすことにする。
ユグハは家周辺でくつろぎ、ノノンはなにやら探し物に行ったらしい。
(……さてさて)
ホムラはパソコンデバイスへと向かい、作業を始める。
……と、
(っ……! な、なんだこの感覚は……! めちゃくちゃ捗るぞ……!)
いつになく集中して作業することができた。
◇
九日目。
「すまんな、今日も家で仕事だ。多分、今日でひと段落すると思うから」
依頼されたのは
五人日とは工数という概念で、一般的な人材が五日程度かけて行う仕事量である。
ただ、実際の現場では、人材により、能力のばらつきがかなりあり、優秀な人が他の人の作業をカバーしているということが頻繁にある。
ホムラははっきりと言って、優秀な部類のモデラ―である。
今日でひと段落するということは五日分の仕事を二日で終わらせる、ということだ。
(会社だったら、早く終わったら次の仕事振られるんだけど、この仕事は成果物主義だから助かるなぁ。早く終わらせて、家の作業したいしな!)
などと、ホムラはモチベーション高く取り組んでいた。
そんな九日目。
ホムラの知らないところで、とある出来事が起きていた。
◇◇◇
「さてと、今日も一狩りいきますか……。この森にはブヒルンがいる。ブヒルンの素材は高く売れるからな。ブヒルンそのものが、少々、危険な生物ではあるが、危険度は中の下といったところか……」
とある腕に自信のある
密猟者はブヒルンを見つけるために森の中を徘徊する。
「っ……!」
ガサっという物音がして、密猟者に緊張が走る。
「……なんだ、ウサギンギンか。驚かせやがって……」
それはウサギンギンという地球のウサギのような姿をした魔物であった。
「ウサギンギンは滋養強壮剤として悪くはないが、今日の狙いはブヒルンだ……」
そうして、探索を継続する。
しばらくすると、森の中に少し開けた場所を発見する。
と、
「マジか……」
開けた場所の中心に、一体の獣を発見する。
「……ブヒルンだ。こんな開けた場所で見つかられるなんて、超ラッキーだ」
密猟者は高揚する気持ちを抑えながら、弓を取り出し、ブヒルンに照準を合わせる。
「…………よし、いく……」
「モ……」
「も……?」
密猟者は自分の背後から聞きなれない鳴き声が聞こえ、不思議に思いながら、ゆっくりと後ろに振り返る。
「ッッッッッ……!」
そして、絶句する。
「も、も、も……モフォルぅうう!?」
それは真っ白い体毛のモフォルであった。
「ふわぁああ!!」
密猟者は平常心を保つことができず、なさけない声をあげながら駆け出す。
それもそのはずだ。
モフォルと出会うことはすなわち
そうして、密猟者は気が付くと、先ほどまでブヒルンがいた開けた場所に逃げていた。
幸いにもブヒルンはいなくなっていた。
その時であった。
それまで晴れていた空が、急に影に覆われる。
「え……?」
密猟者は反射的に空を見上げる。
「――――っ!!」
密猟者は思わず目を開く。
それは辺りを暗くしてしまうほどの巨大生物。
空には、黒く、巨大な龍がいた。
「う、うぅっ……うわぁああ゛あああ゛あ゛あ!!」
密猟者は無我夢中で逃げた。
生きた心地がしなかった。
そうして、30分くらいずっと走り続けて、辛うじて森の外へ出る。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ようやく森の外の道に辿り着く。
ちょうど通行中の人もいて、肩で息をする密猟者を不審そうに見ていた。
そんな通行人に密猟者は語り掛けていた。
「な、なぁ……やばいぞ……! あの森……!」
「はい……?」
「ドラゴンだ……! ドラゴンがいる……! しかもとびっきりでかい奴だ……!」
「ドラゴンってあなた……そんな強力すぎる魔物が、なんでこんなところに……?」
通行人は呆れた様子だ。
「本当だ……本当にいたんだ……! 空を……空を飛んでいたんだ……!」
「うーん……」
通行人が森の上空を見る。
「…………で、どこにいるのでしょう? そんな巨大なドラゴンが……」
そう言われ、密猟者も振り返り、森の上空を確認する。
「っっ……! …………いない……だと?」
しかし、龍らしき存在は確認できなかった。
「いたんだ……! 確かにあの森に……!」
「まぁ、確かに幻龍は姿を変えることができるという言い伝えはありますけども……」
「げ、幻龍……!?」
「ところで、あなた……狩人のような恰好をしていますが、この森って狩猟禁止領域ですよね?」
「ッッ……! んだ、や、やんのか!?」
「お望みであれば……」
通行人の女性騎士は凛とした佇まいで、腰に
◇
一方、その森では。
「あれ? 逃げ帰ったってことは、ユグルニルへの挑戦者じゃなかったのかな?」
ヘルメットを被った少し褐色肌の少女が首を
……服を着ながら。
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