第1-04話 涼子の支配
【——涼子の支配は、深く深く進行していく。】
翌朝、翔太は出勤したものの、頭の中がずっとぼんやりとしていた。
(……昨日、何があったんだっけ)
確か涼子と飲みに行って——それから?
ぼんやりとした記憶の中で、涼子が微笑みながら言った言葉だけが、くっきりと残っている。
「もっと私のことを考えて…?」
その瞬間、胸がドキリと鳴った。
(考えないようにしようとしても、考えちゃう……)
時計を見ると、まだ始業時間まで余裕があった。ふとスマホを見ると、涼子からメッセージが届いている。
「翔太くん、おはよう♡ ちゃんと起きられた?」
画面越しのメッセージなのに、涼子の声が頭の中ではっきり響く。目を閉じれば、昨夜の涼子の瞳や仕草が鮮明によみがえる。
(……ヤバい、完全に染まってる)
このままだと仕事にならない。必死に頭を切り替えようとしたが——
「おーい、翔太。お前、さっきからぼーっとしてないか?」
隣のデスクの同僚・田中が、不思議そうにこちらを見ていた。
「え? あ、いや……」
「なんか疲れてる? それとも…」
田中がニヤリと笑う。
「もしかして、彼女できた?」
その言葉に、翔太の心臓が一気に跳ね上がる。
「え、ええっ!?」
「お前、最近ちょっと様子おかしいしなぁ。もしかして社内の誰かと?」
「ち、ちが……」
言いかけたところで、ポケットの中のスマホが震えた。見ると、涼子からのメッセージがまた届いている。
「お昼、一緒に食べよ?」
(ああ、もう……)
それだけの短い言葉なのに、思わずニヤけそうになる。涼子のことを考えると、頭の中が彼女のことでいっぱいになってしまう。
田中がさらに怪しげな目を向けてきた。
「なーんか、お前ホントに変だぞ? まさかマジで——」
「そ、そんなことないから!」
慌てて否定したが、翔太の心はすでに涼子のもとへ引き寄せられていた。
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【——涼子の支配は、会社でもじわじわと翔太を蝕んでいく。】
昼休みになり、翔太は涼子と待ち合わせのためにオフィスビルのカフェへ向かった。
(……やばい、朝からずっと涼子のこと考えてる気がする)
彼女のメッセージを見るだけで胸が高鳴るし、仕事中も無意識に涼子の笑顔が脳裏をよぎる。
(これ、完全に涼子の影響だよな……)
そんなことを考えながらカフェに入ると、奥の席で涼子が手を振っていた。
「翔太くん、こっち♡」
彼女は今日も圧倒的な美しさだった。シンプルなオフィスカジュアルの服装なのに、周囲の視線を集めるほどのオーラを放っている。
「ごめん、待った?」
「ううん、ちょうど今来たところ。でも……」
涼子はじっと翔太の顔をのぞき込んだ。
「朝からずっと私のこと考えてたでしょ?」
「えっ!?」
翔太の心臓が跳ね上がる。涼子がクスッと笑い、手を伸ばして彼の頬を指でなぞった。
「ふふっ、当たりだね♡」
(やばい……)
すでに顔が熱い。恥ずかしさと動揺で、何も言い返せない。
「昨日のこと、まだ頭に残ってるでしょ?」
涼子が意味ありげに微笑む。
(……昨日のこと?)
頭の中で昨夜の記憶をたどる。飲みの帰り道、ふとした瞬間に涼子が甘い声で囁いた。
「もっと私のことを考えて……もっと、もっと……」
あの瞬間、心がじわじわと支配されていくような感覚に襲われた。そして今も、その感覚は消えていない。
(俺、どんどん涼子に……)
「翔太くん、ボーッとしてない?」
「え、あ……ごめん」
「んー……じゃあ、ご褒美あげるね?」
涼子はスプーンですくったシチューを、優雅な仕草で差し出した。
「はい、あーん♡」
「ちょっ、ここ会社の人もいるし……!」
「いいじゃん、ほら?」
甘く誘惑するような目で見つめられ、翔太は抗えずに口を開けた。
「……あーん」
シチューが口の中に入る。温かくて、ほんのり甘くて、どこか涼子の香りがする気がした。
(……やばい)
「美味しい?」
「う、うん……」
「よかった♡ これからもずっと、私のことだけ考えていられるように……」
そう言うと、涼子はそっと翔太の手を握る。そして、彼の指先を優しくなぞるように動かした。
(……あれ? なんか、身体が……熱い……)
じわりと体温が上がり、心臓が妙にドキドキし始める。
「ふふっ、もっともっと私に夢中になってね?」
甘く囁かれた瞬間、翔太の頭の中は涼子でいっぱいになった。
もう、逃れられない——。
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