第9話 洞窟
(……とはいえ、寝床を整えるにも道具が何もないな)
柊はるかは洞窟の入口まで戻り、改めて周囲を見渡した。
(まずは火だ。明かりも暖もとれるし、食べ物を焼くこともできる)
火を起こすには、燃えやすい素材と発火手段が必要だ。
(発火は……石を打ちつけて火花を出す方法があるらしいけど、そんな技術はないしな)
彼はため息をつきつつ、【鑑定】を活用して使えそうなものを探し始めた。
すると、近くに乾燥した草の塊や、細かい枯れ木を発見する。
【乾燥草】
・燃えやすく、火種として適している。
【枯れ木】
・火がつきやすく、焚き木に向いている。
(燃えやすい素材は確保できた。あとはどうやって火をつけるか……)
彼はしばらく考え込んだ後、洞窟の壁を見上げた。
(火打石みたいなものがないか探してみよう)
岩肌を調べながら【鑑定】を試みると、いくつかの石が目に留まる。
【火打ち石】
・強く打ちつけることで火花を発生させる。
(あった! けど、これをどう使うか……)
見よう見まねで火打ち石同士を擦り合わせ、火花を乾燥草に落とそうと試みる。
「……くっ、なかなかつかないな」
何度も試すうちに手が痛くなってくるが、諦めるわけにはいかない。
(火を起こせないと、まともに生活できない)
そう思いながら、力の入れ方や角度を変えて試し続ける。
そして――
「……ついた!」
乾燥草が赤く燃え始めるのを見て、彼は思わず息をのんだ。
急いで枯れ木をくべ、慎重に息を吹きかける。
やがて、炎が安定して燃え始めた。
「これで、少しはマシになるか……」
ほのかに暖かい火を前に、ようやく少しだけ安堵することができた。
(だが、これで終わりじゃない)
火を確保できたのは大きな前進だが、まだ安心はできない。次は寝床の確保が必要だった。
(このまま地面で寝たら、体温を奪われてしまう……何か敷けるものを探さないと)
柊はるかは洞窟を出て、周囲を探索する。
すると、【鑑定】によっていくつか使えそうな素材を見つけた。
【獣の毛皮(劣化)】
・元は動物の毛皮だったが、時間の経過で劣化している。
・寝床の敷物として利用可能。
【大きな葉】
・乾燥させれば、簡易的な布団代わりになる。
(毛皮があるなら、敷物としては十分だな)
柊はるかは毛皮を拾い上げ、洞窟へと戻る。
毛皮を地面に広げ、その上に大きな葉を敷く。
(これなら、最低限寝られる環境にはなるか)
火のそばに寝床を作り、ようやく休む準備が整った。
(……少しでも休んで、明日に備えよう)
横になり、じわりと疲労が押し寄せてくるのを感じた。
だが、目を閉じる前にふと脳裏をよぎる。
(……このままずっと、この世界で生きていくことになるのか?)
それとも、女神が言っていた「貴方にしかなし得ない道」を探せば、元の世界に戻る方法が見つかるのか――
答えの出ない問いを抱えたまま、柊はるかは静かに眠りへと落ちていった。
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