第12話:説明&文章に加える遊び
14-5)説明
小説中における説明は、少ない方がストーリーに集中できて没入感が得られやすくなります。だからといって全く説明が無いと、意味が分からなくなって読者離れを招きます。説明が多すぎても、もちろんストーリーに集中できなくなるので読者離れを招きます。
したがって小説中の説明の割合はバランス感覚が重要になってくるのですが、人気作は説明が少ない傾向にあります。説明を少なくするには、描写やセリフで代用するしかありません。
たとえば、
『
「おっちゃん、このパンは一個いくらだい?」
「銅貨二枚だ」
巾着袋を覗きこんだ彼が露店主に尋ねる。
「おっと、銅貨が一枚しかねぇや。支払いは銀貨でもいいかい?」
「もちろん」
彼は巾着袋から銀貨一枚を取り出し、露店主に手渡した。
「ほれ、まいどあり」
彼は露店主からパン一個と銅貨八枚を受け取るのだった。』
みたいな感じで、銅貨と銀貨の交換レートが1:10であること、おおざっぱな物価が説明なしでも分かるようになります。
執筆中に説明する必要があるかな? と思った場合でも一度は考えてみて、描写とセリフで説明を省ける場合は省きましょうということです。
14-6)描写に遊びを加える
ここで言う遊びとは、いわゆる言葉遊びのことではありません。たとえば部品と部品を組み合わせて機械を組み立てるとき、その嵌め合いに余裕を持たせることを遊びがあると表現します。
ここで言う遊びとはそんな感じの余裕というか、文章にユーモアやゆとりある言葉を加えて小説らしい趣を演出することを差します。
たとえば、
『朝、スマホのアラームで飛び起きた。マズい、アラームは二回目だ。眠い目をこすりながら歯を磨き、慌ただしく着替えを済ませる。鞄を手に取り、朝食も摂らずに家を飛び出した。今日遅刻したらもう言い訳できない。』
みたいな冒頭があったとします。これに遊び、つまり本筋からすこし離れた描写を加え、
『少女の美声と聞いて、なにを思うだろうか。透き通るように清らかで、羽毛で撫でられるかのごとく柔らかに鼓膜に届く心地よい声。僕はそんな声を聴いていると心が洗われるようで、その安らぎに溺れたいとさえ思ってしまう。
「朝ですよ。さあ起きましょう」なんてことを耳元で優しくささやかれ、この惰眠をもっと貪りたいと二度寝してしまったとしても、誰に責められようか。いや、責められるべきだ。こんな音声を目覚ましアラームにセットした、僕が悪いのだから。
僕は二度目の声を聴き、コメツキムシに勝るとも劣らない勢いで飛び起きた。眠い目を寝巻の袖でこすりながら歯を磨き、バタバタと慌ただしく着替えを済ませる。中身も確認せずに鞄を手に取り、朝食も摂らずに脱兎のごとく家を飛び出した。今日遅刻したらもう言い訳できない。』
みたいな表現にしてみると、文章から堅苦しさが取れたり、余裕が感じられたりして小説っぽさを演出できる場合があります。
どうしても盛り上がりが無くなるイベントの谷間や、間延びしそうなシナリオの途中だったり、シナリオの冒頭などにこのような遊びを加えて完成度を上げられれば、★をくれる読者が増えるかもしれません。
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