11:コラボの準備

 GWも終わってみなさんも本格的にお仕事や学業に戻り始めた頃でしょうか。私はいつも通りマスターの家事をする日々ですが、七月まで祝日のない日々を嘆く方やこの季節の変わり目に体調を崩される方もいるかもしれませんね。みなさんも体調を崩さず元気に私の配信を見にきてほしいです。

 さてそんなGWも終わった私ですがまだやるべき事が残っています。それは秋子さんとのコラボの日程調整とコラボで何をするかです。

 そういうわけで私はDMにて秋子さんとの日程調整を行います。


アリス:秋子さんただいまお時間頂けますか?


秋子:な、何でしょうか


アリス:GWコラボで夏海さんが言ってた私と秋子さんとのコラボに関しての事です


秋子:はい…!


アリス:まずコラボの日程ですが、私は基本的にどこでも行けるので秋子さんに合わせようと思っているのですが、どうですか?


秋子:そ、そうですね…私は大体二十時から二十三時の間でよく配信してるのでその間なら基本的に大丈夫です


アリス:わかりました。でしたら来週の土曜日で時間は二十時半あたりでどうでしょうか?


秋子:も、問題ありません


アリス:わかりました。では、来週の土曜日の二十時半からよろしくお願いしますね


秋子:よ、よろしくお願いします…!何かと迷惑になるかもですが、精一杯頑張ります!!


 さてこれにて日程調整の方は上手くいきましたね。次はコラボで何をするかですね。夏海とのコラボでは雑談配信というか私に対する質問コーナーをした感じですね。私としては今回もそれをしてもいいんですが、別のことをしたい気持ちがあります。例えばゲームコラボとかですかね。しかしオンラインのコラボになるのでゲーム配信ともなればFPSみたいなのしかないんでしょうか…?少し秋子さんに聞いてみましょうか。


アリス:秋子さん、ちょっといいですか?


秋子:何でしょうか?


アリス:私は秋子さんとのコラボでゲーム配信をしたいと考えているのですが、正直オンラインゲームともなればFPSみたいな対戦型ゲームしかないんですかね?


秋子:そんな事はないと思いますよ


秋子:最近は協力ゲームもオンラインで出来る事も増えてきているので問題なく出来ると思います


アリス:なるほど、例えばですがどんなのがありますか?


秋子:そうですね…例えば『落ち人間』といって関節とかがグニャグニャゆえに操作が難しい人間を動かしてゴールを目指すゲームとか二体のうさぎで協力しながらゴールを目指すゲームとかもありますよ


アリス:いろんなのがあるんですね


秋子:ですね。ただアリスさんには対戦型のゲームを進めたいです


アリス:どうしてですか、私が人間じゃないの秋子さんだって知ってますよね?


アリス:私がFPSとかしようものなら人間の速度では出来ない処理をしてしまい多くの方に迷惑をかけると思うのですが…


秋子:そこは安心してください。迷惑をかけずにアリスさんが対戦型を出来る方法があります


アリス:どんな方法ですか?


秋子:えっと…最近のFPSとかってフレンドとかルームIDを入力した人しか入れないマッチングシステムがあるんですよ


アリス:なるほど、話が見えてきました。つまり完全合流型にしてしまえば来るのはリスナーだけなので大丈夫だって言いたいんですね?


秋子:そ、そうです。それならアリスさんも気兼ねなく出来ると思うんですよ。アリスさんがAIだから対戦型ゲームをやると勝負にならないのはわかります。でもそれを理由に一度もやらないのは違うと思うんです…!なのでまずはやってみてから判断して欲しいです


 秋子さんはそう訴えてきます。私がAIだから対戦型ゲームをやらないのは違うと…ですが私は……


秋子:大丈夫ですよ。リスナーの皆さんは受け入れてくれるはずです。もし受け入れてくれなくても私が受け入れます。それが一ゲーマーとしての想いです


 DMのメッセージなのにそこに彼女がいるのではないかと錯覚してしまうほど強い想いが伝わってきます。本当に心から私に対戦型ゲームをして欲しいという強い想いが…


アリス:わかりました。今回は私の負けです。いいでしょう対戦型のオンラインゲームをやりましょうか


秋子:本当ですか!?


アリス:ええ…あなたにあそこまで強く押されては断れませんよ


秋子:す、すみません…!アリスさん相手にあんな事言ってしまうなんて……!


アリス:気にしてませんよ。私としてはいい経験が出来ました。きっとこの出来事は私の中から消えることはないでしょうね


秋子:うっ………なんか夏海さんの気持ちがわかる気がします


アリス:何故ここで夏海が出てくるのですか?


秋子:本当にこの人は鈍感ですね……!


アリス:何を言ってるかわかりませんが、とりあえず対戦型ゲームとは決まりましたが具体的には何をするんですか?


秋子:OPEXというFPSゲームです。FPSの中でも人気が高くて他のライバーさんとかもよくやってますよ。


アリス:そんなゲームがあるのですね


秋子:そうですね。いろんなキャラがいてそれぞれに必殺技とかがあって面白いですよ


アリス:秋子さんがそこまで言うならそのゲームにしましょうか


秋子:ありがとう。それとこのゲームはPCが必要だけどアリスちゃんのPCのスペックって大丈夫なの?


アリス:問題ありません。マスターが作ってくれたPCはそこらの家電量販店で売ってるPCより優秀ですから


秋子:なら問題なさそうですね。それじゃあ来週土曜日はよろしくお願いします


アリス:ええこちらこそよろしくお願いします


 私は秋子さんとのDMを終えたタイミングでマスターが来ました。


「アリス〜、お昼ご飯を作ってくれないかい?」

「いいですよ、というかマスターも少し成長しましたね。少し前までならお腹が減っていようとも関係なく作業に没頭していたじゃありませんか」

「そうなんだよ、ここ最近は妙に食欲が湧いてきてね。これもアリスが毎日美味しいご飯を作ってくれるおかげかな」

「いきなりそんな事言われても気持ち悪いんですが…」

「何故!?」


 自分の心に当ててみればよくわかると思いますよ。それよりも今はマスターのためにご飯を作りましょうか。

 今日のお昼は…うどんにしましょうか。作る手間もそんなないのでこういった時にぴったりです。

 私はマスターを席に座らせてうどんを作りました。以前冷凍麺をネット通販で購入しておいたのうどんの麺を解凍します。同時に鰹出汁を使ってうどんの汁を作ります。最後に冷蔵庫の中にあった厚揚げを入れれば完成です。こんな雑な飯作りでいいのかと言われそうですが、そんなの気にしないに越した事ありません。

 私がうどんをマスターの席に持って行くといただきますと言ってから食べ始めました。麺も程よく出来ていた様でツルツルとマスターの口に入っていきます。

 マスターが食べ終わり私が片付けようとするとマスターから声をかけられました。


「それでGWに秋子ちゃんとコラボするって言ってたけどその件はどうなんだい?」

「今度の土曜日にコラボする事が決まりました」

「ほうほう、何をするかはもう決めているのかい?」

「ええ、OPEXというゲームをやる事に」


 私がOPEXをやると言ったのが意外だったのかマスターは驚いた様な顔をして聞いてきます。


「OPEXって対戦型のゲームだろう、キミはそういうのは嫌っていたのでは?」

「秋子さんに熱く押されたんですよ」

「なるほど、それでキミはやる事になったと」

「何か文句でもありますか?」

「ないよ、でもどうするんだい?キミはAIだから人間には出来ない動きや予測能力で他のプレイヤーからすればチーターと大差ないだろう」

「そこはご心配なく、どうやらあのゲームにはルーム対戦がるのでそれを使えばリスナーとしかマッチングしなくなります」

「ふーん、まあ頑張りたまえよ。それと…もし今度のコラボで何かあった時はすぐに言ってくれたら何か力になれるかもね」

「マスターが心配する様なことは起きないかもですが…」

「念の為と言うやつだよ」


 マスターはそういうと自分の部屋へと戻っていきました。

 私もマスターが食べたうどんを片付けるために台所に向かいましたが、どうも気持ちが晴れる要素はありませんでした。マスターが言ったあの言葉が自分の中でいつまでも反響していて…



ここまで読んでくださりありがとうございます


今回は短めですがここで終わりたいと思います。布石を張ってみましたが、これからどういった展開に繋げようか結構悩んでいます。

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