お見舞いには百合の花を
ゆきやまのきつね
ep.1
冬のまだ暖かった日
日はすぐに沈んで、5時とは思えない程暗かった
部活帰り、コンビニに寄ろうか
自販機でコーヒーでも買おうか
そんな他愛も無いことを考えていた
軽く白に染めた髪は雪景色に溶け
ぼーっと信号を待っている
信号が青く光って
脳が妄想から帰ってきた
ドッと来た疲れに耐えながら
重い足で横断歩道を渡る
何も考えずに頭がふわふわしたまま渡っていたら
耳が痛くなるほど真近くで轟音が響く
咄嗟に音のする方を向いた
トラックがこちらに走っているのが目に入る
夢かと思ってしまう展開に
驚きや恐怖などの感情はなく
無が脳いっぱいに広がっていた
その無を打ち消すように
何かが私の体に強く打ちつけられる
トラックだと思った
だったら良かったのに。
クラクションが叫ぶように鳴る
展開が早すぎて尻もちをついたままでいた
唖然とした私に話しかけたのは
痛々しいほど左半身がボロボロの女の子
「室町さん…?」
ボロボロでも顔は覚えていた
スポーツ全般得意な 「室町 千夏」
柔軟だけ異様にできず
いつだか話題に少しでただけ
「あんたさ、同級生?」
「…え?」
「ほら、リボン」
確かにこの顔は見覚えがあったが同級生とは知らなかった
だが無理もない、うちの高校は一学年五クラスはあるでかい学校
全員と仲良くしろなんて普通に無理
改めて、舐めるように室町さんを見る
あまりにも平気で話すからまるで傷が偽物だと思ってしまう
「あの…室町さん…」
「さん付けしないで」
「あ、ごめっ室町さん…」
「…」
室町さんの顔はいつもムスッとしていて
機嫌は良くなさそう
あまり話さないからだと思うけど
笑った顔など見たことない
偶然の出会いに忘れていたが
室町さんは轢かれたのだ
きっと私だったらもう死んでいる
これが凡人とスポーツマンの違いなのか
私は慌てて携帯を取り出し
救急に電話をかけた
とりあえず近くのベンチに室町さんを寝かせ
話そうとしたが話すことがない、
話しかけず、気まずい時間が流れる
気まずいのは私だけだろうか
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