第4話

わたしを抱いているのは、友達の彼。


絶対に触れてはいけない人。絶対に好きになってはいけない人。



恋なんて、自覚してはいけない。


そんな葛藤を抱えたわたしの過去達は、繊細な硝子細工が地面に衝突して呆気なく砕け散るように、募る快楽によってパリンッと弾けてたちまち原形を失くした。



走馬灯のように駆け巡る記憶の中を旅する。


そう、彼に出会ったのは小学生。桜吹雪の校庭、風の薫る教室、銀杏の通学路、雪の渡り廊下。


いくつもの四季を巡って、足跡を刻むように重ねた思い出には、いつだってわたしと彼と、もう一人の大切な存在があった。



今にも消えてしまいそうに微笑む、儚げで壊れてしまいそうな彼女が望んだのは、わたしが心に思いを秘めていた彼。


まるで命を美しさに吸いとられたかのように綺麗だった彼女は、そっと手を伸ばして彼を求めた。そして彼は、優しくその思いに応えた。



わたしは本当にすぐ隣で、寄り添う二人を見つめていた。


どうすることも出来ない、ただ一方通行の恋情を抱きながら、祝福すべき親友の恋を、祝福できないもどかしさを常に抱え、呼吸するように出会ったわたしたちに、呼吸も苦しくなるような時間を独りで耐えてきた。

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