第22話 有言実行・後編 ① ~牧野夫妻&重役side~

 執筆が間に合わず、この時間での投稿となり申し訳ありませんでしたm(_ _)m

 また、沢山の評価・フォロー・応援に感謝申し上げますm(_ _)m


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 西園寺出版社入口前の階段を登りきった私と美咲、グループ傘下社長らを含む重役達と共にエントランス内に入る。

 それから入ってすぐの所にある受付前に向かったのだが、受付嬢が顔を引き攣らせながら私に声を掛けてくる。


「ま、牧野CEO…っ!?

 ほ、本日はどのようなご用で我が社へ?」


 ふむ。そんなに顔を引き攣らせなくともいいだろうに。

 ……いや、こんな大勢で押し掛けては顔が引き攣るのも当たり前のことか。

 まぁ牧野グループのトップである私自らが来てる、ともなれば尚更か……。

 しかも他にはグループ傘下企業の社長達にその重役達までもが勢揃いだから、かもしれんな。


「ご苦労さま。 突然押し掛けてしまって申し訳ないな。

 御社の社長と上層部に用があって越させてもらった。

 なので悪いが今すぐ西園寺社長に取り次いでもらえるかい?」


「しょ、少々お待ち下さい!

 直ぐに社長に取り次ぎます!」


 私が放つ圧にビクビクしながら受付嬢が内線の受話器を取り、電話を掛け始めた。


「受付の松木まつきです。

 たった今、牧野CEOが来社いたしましてその……今すぐ社長にお会いしたいと申しております。

 ……ええ……はいそうです……。

 ……畏まりました……失礼致します」


 そう最後に言って受話器を置き、受付嬢は私に向き直ってから口を開く。


「社長は直ぐにお会いになる、とのことです。

 それに伴い私がご案内するよう仰せつかりましたので、ご案内致します。

 私の後に続いて着いてきて下さい」


 その言葉を聞いた私は一先ず安心する。

 ここまで来て会えない、なんてことになったら強行突破する他なかったからね。

 出来ればその手段は取りたくなかったから、という意味もあってのと思ったのだ。

 何はともあれ、私と重役達は先を歩く受付嬢の後に続いて歩き始めた。

(待ってろよ西園寺の小童。

もう少しでお前を地獄の底に叩き落とす事が出来そうなんだからな!

それまで逃げんじゃねぇぞ?

 ……逃がす気は毛頭ないがな!)



◇◆◇◆◇



 受付嬢の後にぞろぞろと続いて歩く牧野グループのトップ(夫妻)とその傘下の社長達及び重役達。

 この光景を見た西園寺出版の社員達が戦々恐々といった表情で私たちを見ては視線を逸らしていた。

 それを観察しながら歩いている傘下社長の1人が呟くように言う。


「……こうも戦々恐々といった表情をされながら見られる、というのは落ち着かないわ」


 こう零したのは松原製菓株式会社社長の松原 玲子。

 牧野グループ傘下の中でもトップ5に数えられるくらいに業績を伸ばしている若手女社長だ。

 そして私の息子の葵に想いを寄せているうら若き乙女でもある。


「まぁそう言うでない松原社長。

 これだけの名だたる重役達が大勢来ているのだから、戦々恐々にもなるじゃろうて」


 松原社長の呟きにそう返したのは、大和田商事株式会社社長の大和田 秀介さん。

 松原製菓と同じく牧野グループ傘下のトップ5に入る業績を上げている。

 ちなみに御歳は今年(作中西暦2065年4月16日)63歳である。

 歳を感じさせない程に元気だが、今は2代目社長に就任が決まっている息子さんに経営のイロハを叩き込んでいる最中なのだとか。

 そして息子さんに社長の座を譲った後は奥さんと世界一周旅行へ行く計画を立てているらしい。

 ついでにだが私の息子である葵に爺と呼ばせるくらいには溺愛していたりする。


「そうですよ、松原社長。

 これだけの重役達が揃い踏みしてる光景は、中々見ないと思いますよ?

 下手に粗相などをすれば……と考えているのかも知れませんね。

 だから戦々恐々とした表情をしているのだと、私はそう捉えています」


 大和田社長と同じく松原社長の呟きにそう返すのは、夏川出版株式会社社長の夏川 隼人だ。

 松原製菓と大和田商事と同じく牧野グループ傘下の中でもトップ5に入る業績を上げている。

 私が今いる西園寺出版よりも会社規模が大きい企業でもある。

 尚、松原社長や大和田社長と同じく葵のことを溺愛しており、葵が牧野グループの2代目に就任した際は全力で支えると宣言してもいる。

 だから夏川出版が牧野グループを裏切る可能性はほぼゼロにひとしいだろう。


「松原社長の言いたいこともよく分かりますが、中には俺の妻を卑しい目で見てくる奴らも見受けられますね……」

「大ちゃんの言う通り、さっきから見られてるんですよね~……。

 だから松原社長とは別の意味で鬱陶しいなと思っています」


 そう松原社長に返したのは相模屋運輸株式会社社長の相模屋 大輔社長とその妻兼副社長兼秘書の美春さんである。

 こちらの会社も牧野グループ傘下の中でもトップ5に入る業績を叩き出している。

 相模屋運輸は物流面で牧野グループ全体の約4割を担っている東証一部上場企業でもある。

 大輔社長と美春さんは幼馴染みの間柄で、中学生から交際を開始し、大学在学中に結婚し夫婦となった。

 また大学卒業してから程なくして大輔は父親から相模屋運輸を託され、2代目社長に就任。

 その妻である美春さんは大学卒業して直ぐに相模屋運輸に入社。

 その後僅か1年余りで数々の実績を残し、役員の推薦を経て会社始まって以来の最年少での副社長への昇進を果たした。

 それと同時に大輔専属の秘書も兼任することに。

 尚、大輔の社長就任及び美春さんの副社長就任に反対する社員はいなかったらしい。

 それだけ2人は全社員からの信頼を得られる程に優秀な人物達なのだと言えよう。

 また両名は葵と10歳も離れているが、葵のことを親友だと宣言するくらい溺愛してくれている。

 そして更に両名は牧野グループと同じくらいに葵に絶対の忠誠を誓ってくれている。


 上記の企業を始めとした傘下社長達や重役達は、息子の葵の為に今こうして集結してくれた。

 それだけ息子の葵が愛されているのだと、改めて実感することが出来たし感謝しかない。

 妻の美咲も私と同じ思いを抱いていることだろう。


「皆様。間もなく社長室に着きます。

 ですが全員は中に入ることは出来ませんので、何名かでの入室をお願い致します」


 私たちを案内していた受付嬢が前を向いたままそう言ってきた。


「了解した。 では私と妻の美咲、松原社長と大和田社長と夏川社長と相模屋社長夫妻のみで入室することにしよう。

 それでよろしいか?」


 なので私はそう返答後、後ろにいる全員にそう確認を取った。


美咲「特に異論はないわ」

松原「はい私はそれで構いません」

大和田「儂も異論はない」

夏川「私も異論はありません」

相模屋(大)「俺もそれで問題ありません」

相模屋(美)「私も異論はないです」

傘下重役達「「「牧野CEOの決定に従います!」」」


「同意も得られたので、入室するのは私を含め7名だ」

「畏まりました。

 では社長室前に到着致しましたので、私の後に続いて入ってきて下さい」

「了解した」

「西園寺社長。 牧野CEO様方をお連れ致しました。

 入室してもよろしいでしょうか?」

『……入れ』

「では皆様、こちらへどうぞ」


 西園寺社長がいる社長室前に着いた私たち7名は、先に入った受付嬢の後に続いて入室した。

 そして、


「ようこそ牧野CEO様方。

 皆様の訪問を歓迎致します」


 入室した私たちにニコニコ顔でそう言いながら出迎える西園寺社長。

 それに対し私たち7名は無表情で西園寺社長と正面から対峙する。

 そう……私たちは西園寺社長と世間話をしに来たのではない。

 葵を弄んだことと牧野グループを裏切ったことに対する制裁を下しに来たのだ。

 なにせこれから社長室内で始まるのは、話し合いではなく私たち7名による……制裁劇なのだから───。




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