最強の冒険者になるために
海月
第1話 プロローグ
俺の名前は黒瀬悠真。12歳になったばかりの、普通の少年だ。しかし、俺には大きな夢がある。世界最強の冒険者になるという夢だ。
だが、周りの連中は誰も真剣に聞いてくれない。子供の夢だと、誰もが笑うだけだ。それでも、俺は本気だ。毎日、冒険者になるための勉強や体づくりを欠かさずやってきた。だから絶対に成し遂げてみせる。
最強の冒険者になるんだ…
ダンジョンが現れたのは、2000年の1月1日だった。世界中に突如として震度5弱の地震が襲いかかった。最初は、プレート全体が干渉し合って世界同時に地震が発生したのだろうと思われた。しかし、日本の北海道をはじめ、世界中で洞窟や遺跡のようなものが出現した。
各国は軍隊を派遣して調査を進めたが、その後の調査結果に誰もが驚愕した。
出現した洞窟や遺跡には、新種の生物や植物が生息していた。そして、その中には、空想上の生物とされていたスライムやゴブリンに似たものまで現れたのだ。
これらの新種の生物は、後に「モンスター」と呼ばれるようになり、出現した洞窟や遺跡は「ダンジョン」と名付けられた。
また、ダンジョンに足を踏み入れると、そこに入った者に「ステータス」が発現し、さらに1〜3つのスキルが授かれることが分かった。さらに驚くべきことに、ダンジョン内で出会うモンスターには現代の兵器が一切効かなかった。この事実により、各国はダンジョンの封鎖を進めることになった。
それがただの前兆に過ぎないことを、誰もが知らなかった。
2002年4月1日。春の陽気に誘われて草花が咲き、動物や虫たちが顔を出し始める季節、新しい生活が始まるその日――ダンジョンからモンスターが飛び出してきた。
封鎖されていたダンジョンからモンスターが出てきたことで、事態は急変した。最初は自衛隊や警察が必死に抵抗したものの、力及ばず、モンスターたちは街を目指して進行した。
これ以上の詳細は語るまでもないだろう。
世界人口は約65億人だったが、約25億人が命を落とし、人口40億人まで減少した。ダンジョン周辺の10km圏内は、モンスターたちの支配地となり、人々は住むことができなくなった。
この出来事は「大厄災」と呼ばれ、記録されることとなった。
大厄災を経て、各国民衆はダンジョンに対しての考えを一変させた。封鎖政策が原因でモンスターがダンジョン内で飽和状態となりダンジョンからモンスターが出てきたと考え、政府に対する批判が高まり、ダンジョンを開放しようという声が上がり始めた。
世界各国がダンジョン開放に向けて準備を始めたものの、未知の領域であり混乱は避けられなかった。そんな中、日本では、ダンジョンやモンスターなどが身近に感じられる文化的背景があったため、冒険者組合の設立や銃刀法に関する法律の改正など他国よりも驚くほどスムーズに開放に向けた制度が整備された。
そして2002年7月20日。日本では海の日を迎えたこの日、ついにダンジョンが一般市民に解放されることとなった。
ダンジョンに潜るためには、資格を取得しなければならなかった。資格を得るためには、冒険者としての規則に基づく筆記試験と、体力テストに合格しなければならなかった。この試験は、多くの犠牲を避けるために設けられたもので、冒険者になるための必須のステップとなった。
ダンジョンが開放されたことで、多くの犠牲もあったが新たな発見もあった。
モンスターには現代兵器が効かないが、刀剣類などの科学的要素を含まないものならばダメージを与えることができることが分かった。
また、モンスターを倒すと、ポリゴン化して消え、魔石と呼ばれる黒い石やモンスター由来の素材を残していった。
魔石はエネルギー源として利用できることも分かり、様々な技術革新が起きた。
さらに、ダンジョン内では5階層ごとにボスが出現し、ボスを倒すことで宝箱が現れる。中には武器や防具、回復薬、魔道具などが入っていることが判明した。
モンスターを倒すことでレベルアップし、レベルアップするたびにスキルポイントを得て、スキルを習得できることも分かっていった。
ダンジョンが開放された後、世界の景色は一変した。魔石をエネルギー源として利用することができ、原子力発電所や火力発電所が停止し、代わりに魔石発電所が建設された。魔石による新たなエネルギー革命が始まったのだ。
また、モンスターから得られる素材により、武器や防具、回復薬、魔道具を作る職業が生まれ、専業で冒険者をする人々が増えていった。こうして、冒険者という職業は確立され、社会における重要な役割を果たすようになった。
ダンジョンから得られるものは、もはや人々にとってなくてはならない存在となった。いや、依存していったと言う方が正しいだろう。
それは、まるで誰かから与えられた薬物のように…
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