skytear⑵

天音(あまね)

大切なもの

第1話

頭をガツンと殴られたような感覚だった。



あの後颯太さんと別れ呆然としたまま家に帰った。

すっかり日の暮れた時間に帰ってきた私に、修ちゃんはどこに行っていたのかと聞いていたような気がする。


私はなんと答えただろう。

よく覚えていないけれど、適当に誤魔化したのだと思う。


その後も食事をしながら何か話したけれど、相槌を打っていただけで話の内容は1つも思い出せない。


「まだ風邪治んねえの?」


お風呂に入りそそくさと2階に上がろうとした私に、修ちゃんは呼び止めるようにそう言った。


「うん、頭痛が酷くて。なかなか治らなくて嫌になっちゃうね」


私は困ったように笑いながら言った。


元々風邪というのは嘘で、学校を休むための口実だった。

しかし颯太さんの話を聞いた今は、別の意味で頭がガンガンと痛かった。


「こんな寒い中出歩いてたら治るもんも治らねえだろ」


修ちゃんは少し呆れたようにそう言った後、


「ゆっくり寝ろよ、おやすみ」と私の頭をくしゃっと撫でた。


「ありがとう。おやすみなさい」


私はそう微笑んでリビングを出ると扉を閉めた。

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