第17話 黒帯はみんなドM(異論は認める)
※作者だいたい四段(成人済み)
※副道院長たしかたぶん六段とか(還暦越え)
指導する側になって、分かったことが増えた。
「あ゛! あ゛ー!」
「……」
次の大会に出場する人の、単独演武を私は見る。茶色の帯がパタパタ揺れているのを、視界の中にただ入れている。見る対象のメインは突き蹴り、体の動きetc。
「……ふむ」
私は思う。
ああ、これは相手が実際にいた方がいいな。
単独演武は、等身大の透明人間と一緒に演武するから、明らかに、その人より頭一個上辺りを狙って突いてしまっている。
どこ狙って突き蹴りしてるのか、私は心の中で首を傾げてしまう。
もったいない。
大会で点数入らなくなる。
直せる。
直そう。
「ちょっと自分が掴みにいきますんで、技実際にかけてもらっていいですか?」
直せるように、協力しよう。
その方の手首を、私が掴む。
ゆっくり転がしてもらって、私が動きを誘導する。
「そう。そういう動きです。良い感じです」
自分が持ちうる言葉で、知識で、技の動きをレクチャーする。
問題は――
「あー……もうちょっと、膝を背中に乗せてほしくて……、肩も押さえてほしくて……んー……」
自分がうつ伏せにさせられている中でのレクチャーが難しすぎた。
こちらから見えない分、どう説明して良いか、難しさが増す。
「あー……、あっ」
うつ伏せから立ち上がって、指導で見回っている副道院長に声をかける。
「先生! 裏固めのやり方、教えてもらっていいですか?」
「ああ、いいよ」
野太い声で、応じてもらえた。
久しぶりにいらしてくださった、副道院長。強面。ちょっとびびる。去年の地域のイベントで国歌斉唱アカペラしていたのが記憶によく残っている。
「……」
私は、副道院長にうつ伏せにさせられた。
副道院長が、大会出場者にレクチャーしているのが聞こえる。
それからすぐ、背中に、重さが乗った。
「……っ!」
息が、詰まった。
口を塞がれたわけでも、喉を押されたわけでもない。
背中に、副道院長の膝が乗っている。
苦しくて、身動きが取れない。
「……ぅ!」
腕の固めもあって、さらに苦痛がました。
技がかかっていること、降参のアピールとして、私は床を叩いた。
「……ぅーゎぁ……」
解放された肺と肩。
痛くて痛くて、堪らなかった。
でも、それ以上に。
「すっげぇ、かかったぁ、めっちゃ痛くてよかったぁ」
技を綺麗にかけられて、大興奮した。
もうにっこにこ。
普段、自分がかけてるモノが甘っちょろいもんなんだと思えるくらい。
わぁ、いいものかけてもらった。参考にしよう。
「ぎゃー! 痛い痛い痛い!!」
大会出場者も、副道院長に技をかけられた。
悲鳴が、体育館に響き渡る様を、私は強く見守った。
――
「先生、この方にお手柔らかにしてくださってありがとうございます」
「ああ、べつにいいよ」
「ちょっと、遠慮しがちな方で、もっと思いっきりかけてほしいんですよね」
「そうだね」
「もっと痛くしてほしいんですよ。黒帯だから大丈夫ですよ」
「だね。黒帯はエムだからね」
「ドMだと思ってます」
「HAHAHA」
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