流星きらり襲来1
『「流星きらりとの一日デート券が使用されました」
という訳で今週末遊びに行くね~』
「へ?」
それから数日後。ベッドでごろごろしながらU-Phoneの通知を開いた私はよく分からないメッセージを見て困惑する。最初はシステムメッセージかと思ったが、差出人は「魔法少女スターライト」だった。そう言えばU-Phoneは全魔法少女と全支部の連絡先がデフォで入ってるんだっけ。
『え、何? どういうこと?』
困惑のままにメッセージを返すとすぐに通知がくる。
『ほら、この前お礼に一日デート券あげたでしょ? それが使われちゃったから今度遊びにいくね』
そう言えばそんなのをもらった気がするが、もちろん使ったつもりはない。
『え、いや、使ったつもりはないけど』
『じゃあ誤作動かな? とにかく使ったものは取り消せないから週末富山に行くね。細かい時間は追って伝えるから』
いや、誤作動って何だよ。
メッセージからは「絶対に行く」という強い意志を感じる。もしかしてあの時「一日デート券」なんてくれたのはこのためだったのだろうか。
『でもきらりってすごい忙しいんじゃないの? それに富山なんて遊びにくるほどのところじゃないよ、寿司ぐらいしかないし』
『大丈夫、ちょうどお仕事でそっちの方に行く予定があったから』
なるほど、要するに仕事のついでに会いに行くねってことか。何かと思ってびっくりした。
『という訳でおいしいお寿司屋さん調べといてね~』
『って、えぇ!? ちょっと!?』
思わず目の前に相手がいるかのような突っ込みを入れてしまうが、それっきり返信はこなくなってしまう。さすがトップアイドル魔法少女、おそるべし。
そして週末。私はきらりからのメッセージ通りに昼前に富山駅に向かう。
平日の昼間とはいえスーツを着た大人や旅行者などで駅はそこそこ賑わっている。気軽に来るって言ってたけどこんなところにきらりが来たら大騒ぎになるよな、などと思っていると不意に視界が真っ暗になった。
「だ~れだ」
「ひゃあっ!?」
突然のことに間抜けな声が出てしまう。
とはいえそんなきれいな声で間近で囁かれたらすぐに誰だか分かってしまう。
「き、きらり」
「正解~」
そう言って私の前に一人の少女が姿を見せる。髪をポニーテールに結び、眼鏡とマスクをつけ、ボーイッシュな私服姿の謎の人物。しかしその口からこぼれる美しい声は流星きらりそのものだった。
「すごい、全然気づかなかった……」
「まあ気づかれたら変装の意味ないからね」
「そう言えば仕事って言ってたけど大人の人はいないの?」
「ああ、それは別で来てるから後で合流するっていうか」
何かさっきまでの勢いから一転、急に歯切れが悪くなったような気がするけど、まあ気のせいか。
「じゃあ早速お店に行こうか」
「う、うん」
そして私は駅の近くのお店にきらりを案内する。
やってきたお店はサイトで見たよりも老舗風の外観で私は少し戦慄した。こんなお店、家族でも来たことない。
「おお、すごい。いつもこんなお店行ってるんだ~!」
「ある訳ないでしょ!? ほら、個室とかあった方がいいかなって思って……」
予約した時はこんなに本格的な変装してくるとは思わなかった。
「でもちょっとやりすぎちゃったかな」
「ううん、ゆっくり話せそうで良かった」
きらりの言葉に私はほっとする。
店に入って名前を言うと、すぐに私たちは個室へ案内される。何か他のお客さんみんなお金持ちそうだし、お店の人も高そうな着物を着てるし、どう考えても場違いなところに来てしまった。
縮こまる私とは対照的にきらりは慣れた様子で畳に座り、変装を解く。彼女のきれいな顔と髪が解き放たれ、一瞬見惚れてしまう。
「フレアちゃん、あれ以来想像以上にブレイクしてるみたいだね」
注文を終えるときらりが口火を切る。
外では互いに近況報告も出来ないのでずっと待っていたのだろう。
「あはは、きらりの知名度がすごいからそれにあやかってるだけだよ」
「もちろんきっかけはそうだったと思うけど、それでフレアちゃんのことを知った人がファンになったのはフレアちゃん自身の魅力だと思うよ」
「そ、そうかな」
きらりにそう言われると少し照れちゃうな。
が、そこできらりはにやりと笑う。
「にしてもあの格好良かったフレアちゃんがこんなバズり方をするとはね~」
「っ!?」
そう言ってスマホで動画サイトを見せてくる。
『新着 【蛮族魔法少女クリムゾン・フレア】デビューからブレイクまでの軌跡【切り抜き】』
うわっ、何これっ!?
切り抜きの癖に一時間ぐらいあるし、ぱっと見た感じ私のデビューからこの間のことまで丁寧にまとめられてる。丁寧にまとめられた結果蛮族魔法少女にされちゃってるし。
「もう、きらりまで勘弁してよ~」
学校だけじゃなくてきらりにまでこの話をされるなんて。
自然と顔が赤くなっていくのを感じる。
「どうして? 恥ずかしがることはないと思うけど」
「私はきらりと違って元々こういうのは恥ずかしいの! それなのにこんな変なバズり方して、しかもそれをアイドルのきらりに見られてるんだよ?」
「いや~、バズりに貴賤なしだと思うけどな。もちろん他人に迷惑をかけないなら、だけど」
何だその格言は。
「いや、そうは言ってもきらりの方が絶対いい意味で人気あるでしょ。私なんて何かしゃべるたびにコメントでネタにされてるんだから」
「あははっ、本当フレアちゃんの配信おもしろいよね」
「それはそうだけど……どうせ人気になるなら、もちろん人気になるだけでありがたいのは分かってるけど、きらりみたいにみんなにかわいいって言われたい~」
直接話すのはまだ二回目なのについつい本音が出てしまう。元々私があけすけな性格というのもあるだろうけど大人気魔法少女が相手だというのに。これがトップアイドルの話術なのだろうか。
「その気持ちは分かるけど、これはこれで案外大変だよ? 配信とかSNSとかやる時間は増えるのに、ちょっとでも油断したら一気に大変なことになっちゃうから」
「そっか」
私はふとアイドル系だったけど炎上したという魔法少女のことを思い出す。
そう考えると私は自分が思っている以上に贅沢な状態にあるのかもしれない。
そんなことを考えていると注文していたお寿司が届く。
「わぁ、すごい、回転してないお寿司初めて見た」
二巻ずつ皿に乗ってくるやつではなく、木の板に様々な寿司が乗っているやつだ。
試しに一口食べてみると、口の中でとろけていくような感触がする。
あれ、今私が口に入れたの何だっけ?
まあおいしいからいいか、と思いつつ夢中で食べていく。そして半分ほど食べたところでようやく私は我に帰った。
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