第19話 「特別課題、開示──静寂の中の火種」
夜の講堂を後にした俺は、無言のまま星空を仰いだ。
あのレイナ=エルバートが、わざわざ“対話”を選んだ。
――それは、彼女なりの揺らぎだ。絶対に崩れないと思っていた価値観に、俺たちが楔を打ち込んだ証だ。
(でも、あれは“終わり”じゃない。始まりだ)
俺の中で、どこかに冷たい確信が残っていた。
※
【翌朝・講堂放送】
《全校生徒に告ぐ。近日中に“特別課題試験”を実施する。対象は全学年・選抜クラス。
試験内容、試験形式、全ては追って通知。場所は学園外“戦術演習領域”。以上》
その告知が流れた瞬間、学園中がざわついた。
“特別課題”――それは、年に一度あるかないかの、特殊な実戦形式の課題。
実力だけでなく、生き残る力と判断力が問われる。中には“中止”になった年もあるほど、危険性の高い試験だ。
※
【特別クラス・教室】
「“特別課題”……まさかこのタイミングで?」
リシェルが眉をひそめる。ユーフェリアも難しい顔をしていた。
「戦術演習領域って、あの……魔物も出る場所じゃないスか……?」
ガルドが真顔で言うと、ティナが小さく肩を震わせた。
「わたし……わたし、また足を引っ張ったら……」
「引っ張らねぇよ。お前がいなかったら、あの試験勝てなかったんスから!」
ガルドのまっすぐな言葉に、ティナが目を見開く。
彼女の中で、ゆっくりと“仲間”という言葉が根を張っていく。
「……ユウマ先生、来ないですね」
ユーフェリアがぽつりと呟いた。
「まさか……試験で殺されてるんじゃない?」
リシェルが冗談めかして言うと、廊下の方からいつものように、ゆるい声が聞こえた。
「殺されるかっての。……俺が死ぬとでも思ったか?」
扉が開き、ユウマが入ってくる。
「おはよう、問題児たち。さっそく“次の授業”を始めるぞ。今回のテーマは――“生き残ること”だ」
「生き残る……って、それ本気で危ない試験ってことスか?」
「ああ。今回の特別課題は、実戦演習。しかも相手は“自然と魔物と、時々人間”。
ルールも不明。求められるのは、適応力と判断力。つまり“俺の授業の集大成”だ」
「ねぇ先生。……あのサロンも、来るのよね?」
「当然だ。あいつらは“優等生”だからな。だが……あいつらの中でも、いよいよ“レイナ”が出てくる」
教室の空気が、一気に張り詰める。
レイナ=エルバート。模擬試験で出てこなかった、“学園の王座に座る少女”。
その彼女が、ついに“真正面”から現れる。
「お前らの強さは、すでに証明された。
だが今回は、それを“本物にする”機会だ。魔力に頼らず、知識と経験で戦え。
命を守り、仲間を守り、そして――“選べ”。生き方を、戦い方を」
ユウマの瞳に、迷いはなかった。
生徒たちはその背中を見ながら、静かに頷いた。
「……やるわよ。絶対に、生きて帰る」
「俺も……筋肉、全開で守るス!」
「がんばります。ちゃんと、前を向いて……!」
「連携する。次はもう、“負けない”」
その日、特別クラスはまた一つ“覚悟”を共有した。
戦う意味。守る理由。生きる意志。
それぞれが、それぞれの胸に、静かに火を灯して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます