第19話 「特別課題、開示──静寂の中の火種」

 夜の講堂を後にした俺は、無言のまま星空を仰いだ。


 あのレイナ=エルバートが、わざわざ“対話”を選んだ。

 ――それは、彼女なりの揺らぎだ。絶対に崩れないと思っていた価値観に、俺たちが楔を打ち込んだ証だ。


(でも、あれは“終わり”じゃない。始まりだ)


 俺の中で、どこかに冷たい確信が残っていた。



【翌朝・講堂放送】


《全校生徒に告ぐ。近日中に“特別課題試験”を実施する。対象は全学年・選抜クラス。

試験内容、試験形式、全ては追って通知。場所は学園外“戦術演習領域”。以上》


 その告知が流れた瞬間、学園中がざわついた。


 “特別課題”――それは、年に一度あるかないかの、特殊な実戦形式の課題。

 実力だけでなく、生き残る力と判断力が問われる。中には“中止”になった年もあるほど、危険性の高い試験だ。



【特別クラス・教室】


「“特別課題”……まさかこのタイミングで?」


 リシェルが眉をひそめる。ユーフェリアも難しい顔をしていた。


「戦術演習領域って、あの……魔物も出る場所じゃないスか……?」


 ガルドが真顔で言うと、ティナが小さく肩を震わせた。


「わたし……わたし、また足を引っ張ったら……」


「引っ張らねぇよ。お前がいなかったら、あの試験勝てなかったんスから!」


 ガルドのまっすぐな言葉に、ティナが目を見開く。

 彼女の中で、ゆっくりと“仲間”という言葉が根を張っていく。


「……ユウマ先生、来ないですね」


 ユーフェリアがぽつりと呟いた。


「まさか……試験で殺されてるんじゃない?」


 リシェルが冗談めかして言うと、廊下の方からいつものように、ゆるい声が聞こえた。


「殺されるかっての。……俺が死ぬとでも思ったか?」


 扉が開き、ユウマが入ってくる。


「おはよう、問題児たち。さっそく“次の授業”を始めるぞ。今回のテーマは――“生き残ること”だ」


「生き残る……って、それ本気で危ない試験ってことスか?」


「ああ。今回の特別課題は、実戦演習。しかも相手は“自然と魔物と、時々人間”。

ルールも不明。求められるのは、適応力と判断力。つまり“俺の授業の集大成”だ」


「ねぇ先生。……あのサロンも、来るのよね?」


「当然だ。あいつらは“優等生”だからな。だが……あいつらの中でも、いよいよ“レイナ”が出てくる」


 教室の空気が、一気に張り詰める。


 レイナ=エルバート。模擬試験で出てこなかった、“学園の王座に座る少女”。

 その彼女が、ついに“真正面”から現れる。


「お前らの強さは、すでに証明された。

だが今回は、それを“本物にする”機会だ。魔力に頼らず、知識と経験で戦え。

命を守り、仲間を守り、そして――“選べ”。生き方を、戦い方を」


 ユウマの瞳に、迷いはなかった。

 生徒たちはその背中を見ながら、静かに頷いた。


「……やるわよ。絶対に、生きて帰る」


「俺も……筋肉、全開で守るス!」


「がんばります。ちゃんと、前を向いて……!」


「連携する。次はもう、“負けない”」


 その日、特別クラスはまた一つ“覚悟”を共有した。


 戦う意味。守る理由。生きる意志。

 それぞれが、それぞれの胸に、静かに火を灯して。

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