第9話 「挑発の炎、宣戦の刻」
生徒たちとの実戦演習を終えた俺は、そのまま午前の授業を締めくくった。
ティナも、あの一歩を踏み出せた。それだけで十分、いや、上出来だ。
そう思いながら、俺は特別棟を離れ、本棟の職員室へと歩いていた。……そのときだった。
「……は?」
突如、足元の魔力が弾けた。
俺の周囲が強烈な光を放ち、火花を伴って――爆発した。
ドン、と乾いた音が辺りに響く。
「ガハハッ! 下位魔法とはいえ、爆破魔法をまともに食らったんだ。死んだだろ」
「おいおい、派手にやりすぎだろ。これじゃ痛めつける前に終わっちまうじゃん」
煙の向こうから、軽薄でくだけた男の声が聞こえた。
……ったく、朝から元気な連中だな。
煙を払いながら一歩前に出ると、相手の二人が同時に目を見開いた。
「な……なんで生きてんだよ!?」
「さて、どうしてだろうな」
俺は鼻を抑えながら、平然と答える。
「それと――お前ら」
肩にぽん、と手を置いてやる。
「壊した床と壁、ちゃんと自分たちで片付けとけよ?」
そのまま背を向けて職員室へ向かおうとした――が。
ピリ、と空気の揺らぎが背後から伝わる。
二人の魔力が高まった。さっきよりも、遥かに強い。
「あのなあ、お前ら」
「死ねェ! 無能力者が!」
二人が、同時に魔法を放った。
一人は炎の爆破魔法。もう一人は氷刃を伴った高位魔法。
まともに食らえば、ただの教師じゃ跡形も残らないだろう。
けど、俺は――
煙の中から、無傷で歩いて出てきた。
「ふぅ。誰の指示だ?」
俺の声に、二人の生徒の顔から血の気が引いていく。
「教師の判断とは思えねぇ。……その上にいるやつ、誰だ?」
近づこうとした、そのときだった。
ふわりと熱気が生まれる。俺の首筋すれすれに、炎で形作られた細剣が浮かぶ。
「私よ。私が指示したの」
現れたのは――やっぱり、あの女だった。
学園最上級クラス「サロン」の女王。
次期生徒会長、完璧な血筋、カリスマ、美貌、すべてを備えた生徒の頂点。
――レイナ=エルバート。
「どう? 私なりの“歓迎”のつもりだったんだけど?」
「すまんけど、俺、お前に会いたかったわけじゃないんだが」
軽く肩をすくめると、レイナが薄く笑った。
「そう……なら、失礼するわね、“無能力者”さん。
代わりに、あなたの“特別クラス”に――」
「悪いけど、そういう誘いは全部お断りだ。んじゃ、職員室行くんで」
さらりと背を向けた、その瞬間。
周囲が一気に熱気を帯びた。
気づけば、俺の足元から空間がねじれ、灼熱の炎が辺りを包み込んでいた。
「先生。さっきから、私に随分失礼じゃないかしら?」
レイナがゆっくりと歩み寄ってくる。その瞳に、微笑と――怒りを滲ませながら。
そして、再び俺の首元に炎の剣先を突きつけた。
「殺すわよ、先生?」
「トップ貴族がずいぶん下品な言葉使うんだなぁ。品位って知ってる?」
「ふふ……面白い人ね、あなた。決めたわ」
レイナが笑みを深める。
「あなたのクラス――消してあげる」
その一言に、俺は思わず口角を上げた。
「“俺のクラスを消す”か」
「何が可笑しいの?」
「いや、いい言葉だなって思ってさ。“やれるもんなら、やってみろ”」
俺は炎の刃をものともせず、彼女の方へ一歩踏み込んだ。
「一つだけ言っとく。……うちのクラス、強いぞ?」
「ふふ。なら、見せてもらおうかしら。無能力者のユウマ先生」
レイナは、あくまで優雅に微笑む。
だけど、その背後には――学園の“権力”と“暴力”が、しっかりと潜んでいた。
「その言葉、後悔しないようにね?」
「後悔するのは、どっちかな」
俺はそのまま、炎の刃を背に職員室へと向かった。
その背中に、レイナの声が追いかけてくる。
「近いうちに、あなたのクラスに“お知らせ”を届けるわ。……楽しみにしててね?」
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