〈21〉スマちゃんの居酒屋にて 後編

戸惑い顔の柘人たくと先輩に

「柘人くん。俺と茉千まちの歴史を最初から話してあげるよ。俺らが初めて会ったのは茉千が~~」 滔々とうとうと話し始めた。

まだ何も飲んでいないはずだ。


私は目についた店員さんに声をかけた。

「搾りたて白桃はくとう入りカルピスフィズと、柘人たくと先輩は何を飲みますか?」「とりあえず生中で」「それでお願いします」

そして「はい、お待たせ~」と、何も言ってないのに惣兄の生ビールも持ってきてくれた。

「お疲れ様~。カンパーイ」

惣兄もカチッとグラスを当ててはきたけど、すぐに柘人先輩の方を向いて、「ここからが重要ポイントなんだ。」と、私も忘れているような細かいことを、イチからジュウまで語っていた。


スマちゃんが、「新作だけど味見してみてよ」とお皿を持ってきて、

「“チキンときのこの和風クリームライスコロッケ ゆず胡椒の香りで包んで“ってどう?」と聞いた。

「それ美味しいに決まってる」「さいっこう!スマちゃん天才!」

「だろ?あったり前よう」

嬉しそうなスマちゃん。


たまに柘人先輩にも料理をすすめていたが、兄の相手に必死で、ビールも料理もほとんど手をつけていなかった。(可哀想!)

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