第5話「お父さん、試してみて!」
作業台の上に置かれたガジェットを点検する。
ジェット飛行するために足に取り付けるもので、ブーツ型になっている。側面には小型エンジンが内蔵されていて、足の裏から炎を吹き出し、その推進力で空を飛ぶ。ソーラーアローズがヒーロー活動をするためには、なくてはならないガジェットの一つだ。
でも、結構調整が難しくて、左右のバランスが崩れたり、制御装置が壊れたりすると、うまく飛べなくなって最悪墜落や爆発して吹っ飛ぶ恐れもある。
お父さんが怪我をしないように、もっとカッコよく飛ぶために、きちんとした調整が必要なのだ。
さて、壊れた原因は何かな?
ブーツの側面に埋め込まれた小型エンジンを確認する。
スイッチを押すと、起動はするようだが、エンジンの動きが不安定で、噴射音にも異常がある。どうやら推力のバランスが崩れているようだ。
これじゃ、まっすぐ飛ぶこともできない。
「分解してもいい?」
「もちろん」
アキラさんが工具セットを貸してくれる。
工具の説明をしてくれようとしたけど、丁寧にお断りした。
だって、全部わかるもん。
手早くドライバーを使って、カバーを外し、内部を覗く。
汚れを取り除いて詰まりがないかをチェック。
あれ?キレイだな。エンジンの中の燃料の流れも正常だった。
「ねえ、お父さん。これエンジンは壊れてないみたいなんだけど」
「そうなんだ。なのに、なぜか飛行が安定しなくてね……って、ハル、一目見ただけでそんなことがわかるのかい?僕の娘、もしかして天才?!」
ああ、お父さん溶けちゃった。”ハル”ってばどれだけ避けてたのよ……
ごめんねお父さん、これは”ハル”じゃなくて前世の私が持っていた知識なのよ。
でも、喜んでくれたならいいか。
「出力の調整ってどうしてるの?」
感動のあまり喋れなくなってしまったお父さんの代わりに、私の手つきをじっと見ていたアキラさんに聞く。
「足の筋肉の信号を使うんだ。足に力を入れると、筋肉に流れた電気信号を拾ってエンジンの出力が上がるようになってる」
「センサーどこ?」
「ブーツの内側。ここに金属板があるでしょ?それが伝導体になってるんだ」
なるほど、逆EMSみたいなものか。
センサーの金属板を外してみるが、特に異常はない。
……ん?センサーとブーツ本体の接続部分に少しだけ錆がついている。
「わかった!」
エンジンを起動して、ブーツの履き口を塞いだ。
装着した時と同じような状況を作って、内部の温度を上げるためだ。
しばらくすると、ファンが動き出し、熱風が吹き抜けていく。
同時に冷却ファンも作動し、ブーツの内側を急激に冷やし始めた。
じわり、とセンサーの金属板に水滴がついた。
そして、その水滴がゆっくりと、本体と接続部分の隙間に染み込んでいく。
やっぱり、思った通りだ!
接続部分には、とても隙間があるようには見えない。
でも、水なら入り込める。これじゃ、気づかないわけだ。
「このサビで接続が悪くなっただけじゃなく、この結露が原因で中の回線までやられてたんだと思う」
単なる接触不良だと思い込んでいたら、ここまでは気づけなかったかもしれない。
原因がわかれば、あとは簡単だ。
サビを軽く削り落とし、本体との接続部分は隙間がないように補修。
中の傷んだ回線は取り替えて、保護剤を塗る。
そして、排熱が一部に集中しすぎないように、排気口の位置を少し調整する。
これで温度差が減るから、結露が起こりにくくなるはず!
「お父さん、試してみて!」
ぽかんと口を開けて見ていたお父さんが、今度は満面の笑みで頷いた。
絶対にうまくいくわ。だって私が直したんだもの!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます