第8話 開拓

その水や火の玉が俺が生み出した魔法だと理解するのにそう時間はかからなかったが、俺は大いに混乱した。

あんなに頑張っても一切の手がかりすら掴めなかった魔法が突然使えるようになったのだから無理もない。


一度大きく息を吸って深呼吸をすることで落ち着こうとするが、未だに脳は眼の前の現状を信じられずに興奮し続けていた。

ものは試しにと、まだ残っている火の玉と水を動かそうとしてみると思い通りに動く。

槍のような形、矢のような形、単純にボールのようにすることも自在にできる。

何がトリガーで魔法が使えるようになったのかがわかっていないからこそ、俺は今出ている魔法でできることを全て試そうとした。


しかし物事はそう上手くはいかず、火の玉を2つに分割しようとした瞬間、火の玉ははじめから無かったかのように熱さだけを残してかき消え、水はコントロールを失ってその場に水たまりを作った

それと同時に頭がガンガンと痛みだし、視界は暗転する。


目覚めた頃にはもうすでに外は暗くなっていた。

頭は未だにズキズキと痛んだ。

耐えられないほどではないが、立って歩いたりはしたくないほどの痛みだった。

魔法が使えたのも夢だったのかもしれない、そんな恐怖に心を蝕まれた。

どうしても確かめたくなって、もう一度魔法を使っていたときの感覚を思い出し火の玉を出そうとすると、ハンマーで頭を殴られたかのような痛みが襲ってきた。

ついさっきまでの頭痛がおままごとだったかのように感じるほどの痛み。

意識を手放したいが意識はむしろ明瞭になっていく――――


―――食いしばりすぎたのか口の中から血の味がする。

手を強く握りすぎたのか爪が食い込み手のひらから血が出ていた。

もういっそ頭をちぎってしまおうか、そう思い始めた頃に突然痛みが軽くなる。

無限に思えた頭痛からようやく解放されたことに気づき、泣くしかできなかった。


今考えるとあまりにもこのときの俺は馬鹿だった。

自動防御に対する奇行から始まった一連の流れを思い出すだけで恥ずかしい。


このときの俺の魔素量を正確に知る方法はもうないが、推し量る限りではもうすでに魔法を使うのに十分な魔素はあった。

でも魔法はイメージが大切であるにも関わらず、このときの俺は自動防御からなにか着想を得ることに固執し、使いたい魔法をイメージできていなかった。

これがまず恥ずかしい。


突然すんなりと魔法が使えるようになったのも、このときに水を飲みたくて魔法で水を出してる自分をイメージしたからなんだろう。

しかしこの後があまりにもお粗末だった。

初めて魔法が使えたことに歓喜するあまり体内の魔素がすっからかんになるまで魔法を使い続けたのはまだいいが、一度魔素欠乏で失神して頭痛がしているというのに、再度魔法を使おうとしたのが馬鹿だった。


俺がもし不老不死を持っていなければここで死んでただろう。

しっかりと知識を持った今、魔素欠乏状態で魔法を使う恐ろしさは熟知している。

激しい痛みで済んだのは、不老不死のおかげだった、あの時の頭の痛みは本来なら死んでいることを伝えていたのだろう。

だからといって俺は不老不死を有難がることなどできないが。


今ではあのときに死んでいたほうが幸せだったと思えるのだから。


――――――――――――――――――

『魔法』

自身の体内の魔素を利用、変換することによって異常現象を引き起こすもの。

操作している最中はあくまで魔素が補完するため科学的な影響を受けない。

使うには先天的な素質が必要である。

素質さえあれば努力と体内の魔素量によって進化、変異する。


(例) 真空状態でも魔素を変換して炎を作ることはできる。(必要な酸素なども魔素が作り出すため魔素の消費量UP)



『スキル』

神から与えられた加護。

基本的に能力の大小は体内の魔素によって変動しない。

神の権能の余り物をもらうイメージ。

魔法と違い修練は必要ないが、スキルを持っているかを確認するすべはない。

進化あり…?


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