stollen

第1話

「なぁ、果歩。クリスマスイブって、何してる?」



昼休み、社食で偶然会った和真にそれを言われたのは突然だった。


丁度昼休憩に差し掛かった食堂は、社員が次々に増えてきてざわざわと騒がしい。



「は? なんなの、それって嫌味?」



目を眇めて目の前に座った彼に視線を向けると、その彼は首を竦めて苦笑いをする。



「んなわけないだろ」


「あのね。一緒に過ごす相手がいない事を分かり切っていてそんな質問するなんて、嫌味以外の何があるっていうのよ」



世間一般的には、恋人同士が一緒に過ごすであろうその日が目前に迫っている事を自覚して、果歩は複雑な溜息を零した。




恋人がいない訳じゃない。



それ以上に、将来を約束している婚約者がいるはずの果歩だったけれど。


その相手とクリスマスを一緒に過ごす予定はないのだ。

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