No.1『未解決事件の引き金』
赤木探偵事務所。
巷では名の知れた探偵、赤木良が営むこの探偵事務所では、様々な依頼が来る。迷子の猫探しから浮気調査にストーカー被害の依頼等々…
そんな赤木は警察にも一目置かれる数少ない探偵の1人だった。
そんな赤木の元に何の前触れもなく、この事件の依頼は訪れた。
『ルルルルル…ルルルルル…』探偵事務所のデスクにある受付の電話が鳴り、助手の黒田がその受話器を取る。
黒田『はい。赤木探偵事務所。…え?ハイハイ…赤木ですか?すみません、今、席を外していまして…ハイ、ご依頼なら承りますが…え?自殺の事件ですか…?そ…それなら警察には…なるほど…お話はされたんですね?では、赤木が居る時間に事務所に来れますか?7月なら空いていますので…ハイ。…では、7月の2日ですね。お待ちしております。お名前は…?』
黒田『…鈴木千夏様ですね。ハイ。かしこまりました。それではお待ちしておりますね。忘れずにお越しくださいませ。それでは、失礼致します。ありがとうございました…。』
ガチャン…。黒田はため息をつきながら、ゆっくりと受話器を置いた。
黒田『ふぅ…。何だか、複雑な方でしたな…。』
30分後…、赤木が事務所に戻って来た。
赤木『ただいま…。戻りました~…。』
黒田『おかえりなさい。赤木さん、帰って来て早々申し訳ないのですが…』
赤木『ん〜…何ですか…?依頼…?』
黒田『ハ…、何でも半年前に自殺した交際相手の事を調べて欲しいと…』
赤木『そんなの警察の仕事でしょう…』
黒田『…ですが、警察は取り合ってくれないと…』
赤木『え?…なんで?』
黒田『…何でも…それを調べて欲しいそうです…。その依頼主の鈴木千夏様ですが、どうやら、妙に急いでる様でした。』
赤木『…ん…。…わかった。引き受けますよ。』
黒田『よろしくお願いいたします。』
ー2027年7月2日。
リリリリ…
事務所のインターホン鳴り、依頼主の鈴木がやって来た。
黒田『鈴木千夏様ですね。どうぞ、こちらへ…』
鈴木『よろしくお願いします…』赤木『よろしく。…ま、お掛けになってください。』鈴木『ハイ…』
赤木『…で、交際相手のお名前は…?』
鈴木『…佐藤剛志です。』赤木『その方は…自殺されたんですか…?』鈴木『…ハイ。たぶん…』
赤木『たぶん…?どういうことですか?』
鈴木『実は彼…アウトドアが好きで…キャンプとか良く一緒に行く明るい人だったんですけど、あるキャンプから帰って来てからおかしいくらいに引きこもってしまって…仕事に行かないし…どうしたんだろうと思ってたんです…。それで…少し経った日に…』
赤木『…自殺されたんですね…?』
鈴木『…ハイ。…でも…お、おかしくないですか?頭が無くなるなんて…』赤木『は…?』
黒田『と、言いますと…?』
その遺体は、頭が無く、首から上が無くなっていたという。
赤木『それで…警察は自殺だと言うんですか…?』
鈴木は頷きながら涙を流していた。
黒田『どういうことでしょう…だったら、誰かから殺害されたのでは…?』
鈴木『…たぶん違うんです…。彼…引きこもってる間…ピストルを持ってたんです。…遺体も、指先がピストルを持っていたかのようで…』
赤木『…では、拳銃自殺と…?』鈴木『でも変なんです…!だって、そのピストル、家に無くて…彼の遺体にも手に持ってなかった…なのに…』
赤木『警察は…拳銃を探してくれましたか?』
鈴木『…ハイ…。でも、すぐ探すのを辞めたんですよ…おかしくないですか?もう私…何も信じられなくなって…!』鈴木は涙を流しながら、怒りを露わにしていた。
黒田『まあまあ、鈴木さん、落ち着いて…。コーヒーでも入れましょうか』
赤木『あぁ、頼む。クロさん、スマン。』
黒田『お待ちを…』
赤木『ご依頼ですが…お引き受け致しましょう。』
鈴木『本当ですか…!』赤木『ですが、まず警察にその事件の事をお聞きします。宜しいでしょうか』
鈴木『ハイ…。お願いいたします。』
警察署『ハイハイ、ん?おお、赤木さんか。』
赤木『カべさん、お久しぶりです。』
赤木がカべさんと言い話している電話の相手は警察署の警部補、草壁裕二である。
赤木『カべさん、少し聞きたい事あるんだけど…時間、大丈夫?』草壁『おお、いいよ。事件の捜査か?』
赤木『鈴木千夏さんの交際相手の佐藤剛志さんの事何だけど…』草壁『え…』赤木『…ん?』
草壁『あぁ…いや…何でもない。その人がどうかしたのかい?』赤木『…え?知らないのか…?拳銃自殺の事…』草壁『へ…?』
赤木は驚いた。
この拳銃自殺の事件は報道もされていなければ、
警察署にひとつとして事件簿がなかったのだ。
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