【初】「ただの農家」の跡継ぎだったはずですが?

蒼空らい

〜序章〜 優しい世界

  ある晴れた日、僕はいつも通り庭の畑でベリーを摘んでいた。

 毎日ベリーを太陽に透かすようにして、うっとりと眺めるのが僕の一番好きな時間だ。。真っ赤で、まるで宝石のようにキラキラとしているため、

「ルビー」とも名付けられている。


 このベリーは町で1番出荷数が多く、匂いもあまり強くないため、ケーキやクッキーなどに練り込まれたりして、庶民たちの間でささやかながらブームを起こしていた。


 そしてこれを出荷しているのが僕の家、「アルナード家」だ。母は他界し、父と僕、そして妹の3人家族。地位はそこまで高くないが、とても平和で穏やかな日々を過ごしていた。


 父さんの身長のいくつぶんかはわからない程に大きなベリーの木の前に立って、「おはよう」と言いながら摘むのが僕の日課だ。

 そっと木に手を伸ばすと、ベリーは昨日の雨粒を受けて、一層キラキラと輝いて見えた。

 それをプチプチと摘んで、カゴに入れる。しばらく摘んだところで、父さんが庭から家へ続くドアから顔を覗かせた。


「レオ、ベリーは摘めたか?」


 焦げ茶髪にシュッとしたオレンジのメッシュが入っていて、目は細く、蒼色。口は大きく、

 はっはー!と大きな声で笑う、まるで太陽みたいで、笑顔が魅力的な父さん。

 僕が5歳、妹が3歳の時、母が他界してから、僕らを男手一つで育ててくれた。

(父さんは話したがらないが、メッシュはヤンキー時代のものらしい。)


「うん!摘めたよ、父さん。」

「じゃあ、計量してダンボールに詰めるから、こっちに置いておいてくれ。」

「はーい!」


 僕は元気に返事をして、指定された場所へカゴを乗せた。

 今日はパン屋と果物屋に出荷するらしい。[パン]と[くだもの]と分類され、ベリーの描かれたダンボールが、玄関脇に積まれていた。


「225…245……よし!250ぴったりだ!」

「もー!パパってば声が大きい!うるさいよ!」


 台所で計量をしていた父さんが突然叫んだと思ったら、横から妹の声が飛んできた。

 どうやら2階にいた妹が降りて来たようだ。


妹は父さんに似て髪は焦げ茶髪でポニーテール、目は母さんに似て大きく、瞳は薄緑色。

それに比べて僕は全体的に母さんに似ていて、髪は金髪で片方を三つ編みにしている。

父さんが不器用だから、切り間違えたんだよね(笑

目は母さんよりちょ〜っと小さくて、瞳は薄い青緑だった。


「おー。起きてきたのか、リア!」

「『起きてきたのか、リア!』じゃなーい!もうとっくに起きてたもん!」

「じゃあ、何をしてたんだ??」

「それはね〜…ひ・み・つ〜!!それよりパパ!ちゃんと仕事して!!」

「はいはい、じゃあお嬢さん手伝っていただけるかな?」

「…しょーがないから手伝ってあげる!」


 毎日見るような光景だが、僕は思わずクスッと笑ってしまった。

 こんな日々が、時間が、続けばいいのに。そんな願いはあの戦いをきっかけに、もう叶わないことが約束されてしまったのだった。

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