第3話 好感度アップイベントとHP36の女

朝起きて、スマホを確認する。

「おお。ゴミ出しイベントだ。」

今日は一般ごみの日。私は自室のゴミをまとめ、リビングとキッチンのゴミ箱からゴミを集める。あとは、パパンの寝室なのだが。


「おはよう。」

振り向くとゴミ袋を持った父親が目を見開いている。

「お父さんおはよう。ゴミ出し行くから置いといて。」

「お、お前、昨日からどうしたんだ。大丈夫か?」

「何言ってんの。お父さん朝いっつも何食べてんの?パンが無いんだけど。」

「ああ。買い忘れたな。バナナがあるからそれを食べよう。」

「私部屋にプロテインバーあるから、お父さんそれ食べてよ。じゃ着替えてゴミ捨てて来る。」

「ああ...」

お父さんは相槌を打ったままフリーズしてた。

「行ってきます」

私はゴミを持って部屋を出た。

よし。いくぞ。


私はエレベーターで誰にも会わなかった事を安堵しながらゴミ捨て場に。昨日と同じ服だが昨日は(も)外に出てはいないし、クリーンしたから綺麗だ。


うわ。最悪。井戸端会議に遭遇した。

「おはようございますー…。すみません、ゴミ捨てさせて下さい。」

立ち塞がる女ども。


「あらー。関屋さんとこの。お久しぶりね。お元気?」

井戸端会議のボス横井花恵さんが満面の笑みで、私の顔をじっと見つめている。その目は、獲物を品定めするかのように、妙に優しすぎた。


おらどけよマジで。入り口で立ち塞がんなくそが。

「はいー。おかげ様で~。あのー。ゴミ捨てさせて下さい~。」

笑顔。笑顔だ。


「最近見ないからどうしたのかと思っていたのよー。今日は元気そうで安心したわ。」

と川口さん。

「次自治会役員でしょ?てっきり顔合わせあなたが来ると思ってたのよー。でもお父さんが来たからびっくりしちゃったわ。」と横井さん。


「そうよ、関谷さん。家事手伝いなんでしょう?忙しいお父さんじゃなくて、あなたが全部やるべきなんじゃない?」

江本さんの声がやけに刺々しく響く。


針の筵である。言葉のニュアンスに微妙にニートへの悪意を感じさせるぞ!


「あはは。そうですね。そうさせてもらいます。ゴミ捨てたいんですみません。」

そうだ。最初は買い物もゴミ捨ても行っていたのだ。

あまりに私の事を根掘り葉掘り聞いてくるので嫌になったんだった。

私はやっとの思いでゴミを捨てる。

何時に来ればこいつらは居ないのだろうか。

父親は毎回これの相手をしているのか?仕事前に?!

『報酬 鑑定 横井花恵好感度アップ』

ちょww何故に好感度アップwww


私は頭の中で鑑定を発動する。途端に目の前の景色にあるすべての物の名前が表示され、全身の細胞が急激な情報過多に晒されるような酷い頭痛が走った。 私はそのまま倒れた。


「救急車!」

くっそ!女どものギャアギャア声がうるさい。

『デバフ混乱解除のため鑑定を閉じます。安全のため鑑定はナビゲーターと統合します。』

ようやく頭痛が少し楽になる。

私は頭を押さえながら起き上がる。


「あ、いや大丈夫です。帰って寝ます。大丈夫なんで。」

困る。絶対病院とか嫌だし万が一入院とかになったらむしろ死ぬわ。ネットが無い環境でずっと寝てろとか耐えられない。あったとしても寝てるのはやだ!異世界が私を待っているのだ!


「だめよ!血が出てるわ!!」

ああ!横井花恵が大袈裟でうるさいっ!!

「莉緒!!どうした!!」

「立ち眩み。低血圧なの。大丈夫なんで。帰りますんで。ご迷惑おかけしました。」

私は父親が部屋まで来てくれるというのを断って自分で部屋に。


酷い目に遭った。

鑑定は対象を絞って発動の意思を持って発動とルール付け。ナビゲーターを通して安全に発動してくれるらしい。


スマホを見ると図鑑が。やつらのプロフが。 横井花恵(31)HP36MP0て何よ。私HP8000あるんだけど。一般人と比べ物にならない数値に、アプリの異常な力がどれほどのものか、初めて実感した。


家に帰って頭の血をクリーン。洗濯物にクリーンして畳むと私はアプリを起動した。

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