第7話 これはあたしの出番だね

  そう言った瞬間、背後から何者かが斬りかかってきた。

 メナスが敵の剣を弾き、相手を地面に押し倒す。


「あなたは何者です! なぜご主人様に刃を向けた!」

「こ、殺すな! 俺は命令されただけだ!」

「命令だと?」

「この先には誰も通してはならない。ここに来た者はすべて排除しろと……!」


 つまり、ここにいるのは単独の殺人鬼ではなく何らかの集団組織だ。

 この奥で確実に『何か』が起きている……。


「貴様、所属を明かせ。一体こんなところで誰が何を企んでいる」

「それは言えない……」


 私は男に松明を向ける。

 炎の熱がジリジリと男の肌を焼く。


「言わなければどうなるか、分かっているのだろう?」

「クソ……。我々はクレーディア王国第二師団所属、第一特務小隊だ……」


 それを聞き私は松明を男から離してやる。

 どうやらこの男はクレーディア王国の正規の兵隊らしい。


 私はガウェインのほうを見た。

 彼女は首を横に振る。何も知らされてないようだ。


「なぜ王国の正規兵がこんなところにいる」

「……」

「答えろ」

「言えない! 私は国王に忠義を誓った身だ! これ以上話すくらいなら……殺せ!」


 松明の火を再び男の顔に近付けるが、今度こそ本当に押し黙るつもりらしい。

 私も人間の肉を焼く趣味はない。どうにかならないものだろうかと思っていると、ふと、昨日森の中で獣たちを追い返した時のことを思い出した。


 これはもしかしたらアレの使いどころかもしれない。

 今までは何の役にも立たないハズレスキルとばかり思っていたが、使いようによっては……。


「この奥には一体何がある! ──ッ!」


 真紅の瞳が光を発する。

 それを見た男は、息を荒くして唸り始めた。


「あ……ぁ……!! 嫌だ!! 死にたくない!! 離してくれ!! 嫌だ!!」


 男は尋常じゃない怯えようで、瞳の焦点も合わさらず歯をガチガチと鳴らしている。

 思ったよりも効果はあるようだ。


「聞こえなかったのか? と言っている!」


 私がたたみかけると男はぼろぼろと涙を溢し叫びだした。


「怒鳴らないでくれ! 頼む! 怖いんだ! どうしようもなく怖いんだ!」

「だったらどうすればいいか分かるな?」


 男は目の前の恐怖から逃げ出したい一心で話し始める。


「こ、この奥には巨獣が眠っている!! この国は巨獣を使って何かをしようとしているんだ!! これ以上のことは知らない!! 本当だ!! 知らされていないんだぁああッ!!」

「巨獣だと?」

「ぁ……ぅぁ……」


 男は気絶した。

 可哀想だが聞き出したいことは聞き出せた。

 つまり、この先はすごく危険というわけだ。


 それにしても気絶するほど恐れるとは思わなかった。

 この能力、出力の制御は出来ないのだろうか。

 まあ、能力の詳細は追々試験を重ねて確認するとして。


 私はガウェインと顔を見合わせる。


「この先に巨獣がいるのなら──」


 彼女は聖剣を撫で、真っ直ぐな瞳でダンジョンの奥を見据えた。

 その瞳は紛れもなく円卓の騎士のそれだった。


「これはあたしの出番だね」

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