第22話

俺はマウンドに立つと、深呼吸をする。久しぶりだからな。緊張しないわけがない。だがそれ以上にまたこのマウンドに帰ってこれたのが嬉しい。そして相手をねじ伏せられるのがまたワクワクする。


俺はサインを見るまずはストレートを外角一杯に投げて様子見か。全力の球を投げてやる。俺は思いっきり腕を振った。すると延びのある直球がグラブに収まる。


「ストライーク!」


打者は驚いたような顔をしている。まぁそりゃブルペンとは違うからな。手を抜いていたし。その後も変化球を投げて先頭打者は三振に打ち取り、その後の打者も抑えた。そして高梨が近づいてくる。


「まだ変化球全力じゃないよな」


「まぁ抑えておかないと、バテるからな。ほどほどにしてるんだよ」


「完投するきまんまんか」


「まぁ次の打順は俺の元相棒に回ってくるから、そこは全力で投げるがな。あいつには手を抜いたら、打たれる」


それくらいの実力をアメリカで付けていただろうし。キャッチングはどれくらいできるようになったかはわからんが。少なくともアメリカの野球では速球が捕れなきゃ話しにならないから、速球はきっと捕れるはずだ。リードも上手くなっているだろうしな。


そう考えながら、俺は黒上の配球を見ていた。すると変化球中心で的を絞らせず、変化球待ちのところで、速球を投げて、手を出させないようにしていた。


「これなら速球が余計に早く感じるだろうな。あっちで速い球だけだと打たれるから、上手く変化球を使う方法を習得したんだな。俺のときは速球が多かったし」


「リードもさすが都内大会ベスト4まですすんだけあるな」


そうドリンクを飲み終わった高梨が言ってきた。


「いやあの頃よりかなり成長してるぞ。ストレートで押せ押せタイプだったが。上手く緩急を使ったリードをしている。バッティングも体が一回り大きくなっているしな」


柔軟性も増してるから、全体的に柔らかい動きをする。フォロースルーも無駄がない。まぁ高梨も守備では負けてないと思うが。そんなことを考えていると、あっという間にうちのチームの攻撃は終わった。


「それじゃ行くか」


「おう」


俺達はそれぞれのポディションに着いた。俺は二人を簡単に三振にして打ち取り、黒上を向かえた。打席に入った時のプレッシャーがハンパないな。これがアメリカで鍛えた黒上の実力か。甘く入ったら、一本打たれそうだ。


俺は深呼吸して、集中力を増しさせた。まずは様子見で、外角のスライダーを要求されて、投げた。するとまず様子見で、黒上は見逃してきた。まずはワンストライクか。そのあと今度もまたスライダーを要求されたので、インコースに投げる。スルドいへんかをしてストライクだと思った瞬間バットに当たり、レフトとセンターの間に鋭い打球が飛んでいった。


「今のスライダーは悪くないコースだったはずだ。それなのにヒットを打たれるとは。思った以上に成長してるようだ。さすがアメリカで野球をしていただけはある」


そう思いながら、俺は打球の行方いを追っていた。結局ツーベースヒットとなったが後続を連続三振で抑えた。


そしてベンチに戻ると、高梨が話しかけてきた。


「まさかあのスライダーを完璧にとらえるとはな。一条の言っていることが分かったわ。そんなにコースも甘くなかったはずなんだがな。同じ変化球を多用するの止めた方がいいかもな」


「そうだな、同じ球は通用しないと思った方がよさそうだ」


俺はふと黒上を見ると、マスク越しに不適な笑みを浮かべられたような気がした。ふっそうか、それなら次は抑えてやるよ。


俺はその後も打者を抑え続けて、白熱の投手戦を演出する。そして二順目の黒上が回ってきた。さっきはスライダーを打たれたから、違う変化球をなげるか。


初級はツーシームを要求された。しかもインコース甘くなったら、スタンドまで持ってかれるだろう。だが俺のコントロールを信じてくれてるんだな。それなら投げてやるよ。俺は深呼吸をして、ストレートと同じ振りでツーシームをインコースに投げた。


「ストライク!」


「まずはワンストライクだな」


さて次はスプリットをボールゾーンか。落として空振りを誘うって感じか。俺はスプリだとを思いっきり腕を振って投げたが、バットがでそうになったが、途中で止めてきた。それでボールとなる。今のを振らないとは。選球眼も磨いてきたか。


「そっちの方が面白いじゃねーか」


ワクワクしてくるな。強打者に全力を投げて抑えようとするのはこんなにも胸が高鳴るものなんだな。


次はストレートか。さっき落ちるボールを投げたから、同じ軌道の球だから、またスプリットだと思って見逃すだろうと予測してか。さすが頭がいいな。


俺はストレートを投げた。するとやはり見逃して、ストライクになった。これで追い込んだ。次はなんだ?


ナックルカーブを要求するか。確かに黒上はこの球を見たことがない。だからどいう軌道か分からない。だから高めから落とせば見逃してくるだろう。


俺はニヤッと笑い、ナックルカーブを全力で投げた。すると急止したように一旦止まるように見えてグッと落ちるように曲がったはずだ。黒上は驚いたような顔をした。


「ストライク!バッターアウト」


三振を取ることができて、リベンジを果たした。府とベンチ裏を見ると、一葉と目が合いにっこりと笑顔を浮かべた。ふとキュンときた。まさか一葉にそんなことを感じるときが来るとは。その後も抑えて、三人で終わった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る