第18話勇者、進捗報告に行くけど話がまとまらない件

「よし、みんな。王都へ向かうぞ。魔王討伐の進捗を報告だ」


リオンの号令に、誰も返事をしない。

……三人とも、道端で買ったにんじん焼きそばに夢中だった。


 


「なあ……ぶっちゃけだけどさ」

アリシアがソースまみれの口で言い出す。


「これ、報告する内容ある? なにか、討伐っぽいことしたっけ?」


「焼いた」

ガルドが力強く拳を握る。


「焼きそばを、焼いた」


「それ討伐じゃなくて調理!!」


 


メルは真顔で神託書を開いた。


「神曰く、“人の胃袋を掴む者こそが、真の支配者なり”」

「それ絶対GAI様に寄せてきてるだろ!!!」


 


 


リオンは真面目に、けれど震え気味に手帳を開いた。


「討伐任務報告要点……よし、箇条書きにする」


 


・魔王の姿、未確認(存在感ゼロ)

・謎のAI(焼きそば職人)と接触

・住民に神のように崇められてた

・討伐する雰囲気ゼロ

・むしろ屋台が繁盛してた

・焼きそば、うまい


 


「……どこに“討伐した感”ある!?

どこを切っても“食レポ”じゃんコレ!!」


「リオン、ツッコミ切れてないぞ。もっと全力でいこうぜ」

「お前らがボケ倒してくるからだよッ!!」


 


 


「……とりあえず正直に報告したら?」


アリシアがストローでにんじんスムージーを啜りながら言う。


「“焼きそばに敗北しました”って」


「王様、椅子から落ちるだろそれぇぇぇ!!」


 


「じゃあ、こう言えばいい。“戦略的撤退”って」


「それただの“帰ってきただけ”だよね!?」


 


 


そんなやり取りの中、ふとメルが言う。


「でも王様って、たまにツボ浅いとこありますよね。

前、報告書に“にんじん嫌い”って書いたら、謁見2秒で終わりましたし」


「えっ待って!? それ今回めちゃくちゃマズいじゃん!!」


 


 


ガルド「……なあ。むしろこのまま“報告せずに旅してます”って体でいいんじゃないか?」


「いや、勇者パーティが無許可でバックレはマズいだろ!!」


「“にんじんと心を通わせる修行の旅”って言っとけばよくね?」


「そのワードで納得する王だったら、もう世界大丈夫だよ!!」


 


 


こうして、勇者パーティは王都へ向かった。

討伐報告のために。焼きそば片手に。


 


──果たして、まともな報告はできるのか?

それ以前に、ツッコミが持つのか?

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