小説① 花柄の小箱の中身
これは人づてに聞いた話でして
彼には幼い頃から仲のいい友達が、二人いるらしいです。
所謂、幼馴染ですね。良くも悪くもですが、そういう関係って意外と長続きしますよね。
まず、一人目の友達の話からしましょう。
小学生くらいの時、この子が「二人に聞いて欲しいことがある。」と言って家に呼び出されたらしいです。
彼らにとって、それは珍しいことでした。
彼の地元は山の近い田舎らしく、普段は山や川で遊んでたと聞きます。彼の年齢を考えれば、田舎でもゲームで遊ぶ方が主流だったようにも思えたんですが、学校で禁止されいたそうです。今では考えられないですね。
当たり前にルールを破る子もいたらしいですが、彼らの親は厳しかったようですね。家に呼び出した子の親はとくに。
その子の家は、村の元地主のようなものだったらしいです。そう考えれば納得ですよね。なんでも百年以上の歴史ある家だそうです。田舎ならではですね。
だからこその話だったんでしょう。
久々に入った家は、どこか威厳を感じさせるようで、いつも彼は緊張していたと言います。広大な敷地に堂々と佇み、門や庭に石畳なんかもあったらしいですから当たり前ですよね。というか、家というより屋敷ですよ。だからここからは屋敷と呼称させていただきます。
彼らは、屋敷に入るなり「とりあえず見てほしい」とだけ言われ、奥にある書斎に招かれたようです。最初の一言のみしか喋らなかったその子の顔はどこか暗く思い詰めていたようでした。それにつられて彼らも黙って着いて行ったらしいです。ちょうど誰もいなかったのか物音はせず、外から聞こえるはずの虫の声や木々のざわめきもせず、彼は不気味に感じてました。
これからなにを見せられるのか、なんの話を聞かされるのか
嫌な予感をずっと持っていたらしいです。見事に当たりましたね。
気づくと書斎の前まで来ていました。書斎は、和風の部屋に似合わない洋式の扉が拵えられており、まるで待っていたかのように半開きだった。その子は、この異様な雰囲気に組み込まれた仕掛けになったみたいに、自然にドアを開けてようやく口を開いた。
「あそこにある箱を聞いてほしい。」
違和感しかない言葉を放ち、指を刺した。
その方向には、神棚でも置かれているような棚板が中途半端な高さで設置されていた。載せられているのは小さな箱が一個だけ。違和感はまだ続く。
箱の大きさは、当時の彼の握りこぶしがふたつ分ほどらしいです。だいたい10cmにいくかいかないくらいでしょうか。気味が悪かったのは、その見た目だったと言います。
全面にだいぶ昔の和紙が丁寧に貼り付けられており、その和紙には押し花が施されていました。和紙は劣化のせいで色褪せて薄い茶色だったのですが、ところどころに黒い
この時の彼の言葉は、やっぱりおかしいですよね。そもそも見た目がおかしいのもあるんですが。普通は、花びらが黒い滲みが避けるように言うと思うんですが、なぜかそう言ったんですよね。もう聞けないんですけどね。
ちなみに、他にもおかしい部分があったらしいんですよね。
箱の留め具の話です。なんでも、開けるように作られていないようだったとか。彼の想像も踏まえてらしいんですがね。
四隅に木目丸い出っ張りがあり、それを固定するように留め具がいくつも連結されてたらしいんですよね。それが隣の面だと丸い出っ張りが、四隅から同じ丸い一個分中央に配置されていて別の面の留め具と連結していたと言います。彼曰く、箱に円柱のような部品が差し込まれいるんじゃないかと。
僕は、箱の中にある何かを封印するための結界だと思うんですよね。わからないですけど。
それでは話に戻りましょうか。
明らかに異質な箱を指差して、聞こえないかと言われた彼は、何も言えなかったらしいです。代わりにもう一人の子が聞いてくれました。
「なんなんだよ! あれ!!? 」
「わかんない、、悪いものを吸い取って僕の家を守ってくれてる箱ってお父さんが言ってた。だから絶対に開けるなって、、、」
それでようやくその子は、事の経緯を何度も口籠もりながら説明してくれたらしいです。
子供だからでしょうね。絶対するな! とか言われたり、あまり近付くな! なんて対応されると逆に気になっちゃうんですよ。しかも、ゲームも禁止されてて、格式高い家だったなら厳しく育てられたんでしょう。どこに好奇心を
それで何度も観に行っていたらしいです。
なんで鍵をかけられてなかったんでしょうね。
そう思ったんですが、僕、気づいちゃったんですよ。悪いものを吸い取る仕組みなら、ドアは開けとかないといけないんだなって。だって締め切っちゃったら、その部屋の分だけしか集まらないじゃないですか。だからおそらく、その家じゃドアを閉めないルールでもある思うんですよね。まぁ、わからないですけど。
話に戻りますね。とりあえず先に伏線を回収しておきましょう。
その子は、何度も箱を観察したらしいです。
すると中から声が聞こえるようになりました。
ずっと同じ言葉を繰り返してたらしいです。
「開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ開けてくれ」
怖くなったその子は、ひとりでずっと怖がってたらしいんです。
親に秘密で部屋に入っていたんですから言えなかったんでしょう。それか、父親が近づかせなかった原因に身をもって体験した自分を攻めたとも考えられますね。
ただ、自分の家ですからね。避けようがないですからね。限界が来たんでしょう。
それでまずは確認しようと思った。
他の人にも聞こえているのか。
それで彼らを呼び出したんですよね。そう言う流れらしいです。脱線が多くてすみませんね。
結局、呼び出された彼らも聞こえなかったらしいんですけどね。
彼は、親に相談すべきだって言ったらしいんですけど、首を振るだけで何も言わなかったらしいです。
小学生ですからね、他に打開策もなくみんな黙っちゃって有耶無耶にして解散となりました。
それ以降、この話は暗黙のうちに会話には出ず、以前のように遊んでたらしいです。
その子も気にしていないように振る舞ってたらしいですし。
でも彼も不思議がってたんですが、普通そういう出来事があったら、割と疎遠になるはずなんですよね。それが、彼が中学で引っ越すまでは仲良かったらしいんですよ。
実際にあの箱の力のおかげなんですかねぇ。
ただ、次に彼が箱の話を聞いた時は違ったんですよね。
高校生の時に、また会おうと思って遊びに行ったらしいんです。引っ越したと言っても県を一個跨いだだけで、電車とバスで行ける時だったと言います。箱のこともすっかり忘れ、楽しかった日々だけを想起させながら向かいました。
久々に三人揃い、デパートのフードコートで何時間も談笑したらしいです。それから連絡先を交換して、また会おうなんて言いながらの別れ際にその話は出ました。
「そういえば、あの箱は悪いものを吸い取ってくれるんじゃなくて、福を呼ぶ神様が入ってるんだよ! だから絶対開けたらダメなんだよね。」
それだけ言って、満面の笑顔を向けて走って帰って行きました。
これでこの話は、一旦終わりです。
僕は、納得しましたね。
箱の仕組み的には入れるものというより、閉まっておくものだと思いましたしね。
でもいろいろおかしい部分もあってですね。
次に続くんです。
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