第7話 対コンコルディア〜終幕〜

終幕──最初に動いたのはコンコルディアだった。

これまでも散々見てきた右前足での叩きつけ。


対する私は、これまでと同じように右へのジャンプでやつの攻撃を避け、闇魔術を展開し、撃ち出す。


闇の槍ダークジャベリン


今回の魔術はどれくらいの攻撃ならやつに通用するのかを確かめる意味をこめて、いままでのものより多くの魔力を注ぎ込むことで威力を高めた。


ドガンッ…


着弾する。


風よウィンド


流れ作業のように、攻撃により巻き上がった砂煙を吹き飛ばしやつの状態を確認する。


これまで少ないダメージしか入れることができていなかったコンコルディアの体表が大きく抉れていた。

 

「よし。いける」


これで勝利までの筋道は決まった。


闇球ダークボール


ドドンッ


このまま闇球ダークボールを撃ち続けてやつの防御力を削る。


闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】【闇球ダークボール】──


──弱体効果が相当利いているのかやつからの攻撃がだんだんと少なくなってきた。


そろそろか…


私は足を止め、コンコルディアを正面に見据える。

コンコルディアも動きをとめ、静かに私を見据える。


──2人の視線が交差する。


私はコンコルディアのほうに向かって走る。


私の練度が低いのか、魔術での攻撃は遠距離から撃つと空中で魔力が分散していき着弾するときには、放ったときのそれよりもいくらか威力が低下してしまう。


だから、私は走る。

最大火力の攻撃を直接やつに叩き込むために。

最大火力を叩き込みたければ、至近距離で打ち込むしかない。

中途半端な攻撃で倒し切ることはできないだろうから最大火力を打ち込むしかない。


コンコルディアが口を開き、口の中に魔力を集めていく。


そして──


コンコルディアが顔を上げ、私を正面に捉える。


──くる。 


「グルァァアアア!」


地面を抉りながら私に向かって真っ黒い極太の光線が迫ってくる。

破壊力は凄まじいもので、戦闘中にできた瓦礫の山や地面を無視し、その全てを抉りながら私に向かって迫ってくる。


まだ、まだだ、ここから魔術を放ってもやつを倒し切ることは出来ない。

だが、あれを食らえば確実に負ける。

そうなれば攻撃をいれるとかどうとかそれ以前の問題だ。

成功したことはないけど、やるしかない…。

おそらくあれでしかあの攻撃を防ぐことはできない。


複合魔術。

私の扱うことの出来る3属性を混ぜ合わせ魔術として成り立たせる。

私はまだ2属性でもできたことがないそれをいま、土壇場で成功させるしかない。



「ふぅ…」


集中する。


属性を宿した魔力が互いに溶け合うイメージをする。

深く、深く、深く溶け合うイメージ。

この瞬間も光線は止まることなく迫ってきている。

1秒が何十秒、何分にも感じるほどに長い。


「ぐっ…」


難しい、けど──


「──いける」


光線が迫る、その瞬間。

何かが繋がる感覚がした。

私の存在が一段上昇したような…そんな感覚。


絶壁ぜっぺき


私の前に光を放つガラスのような壁が出現する。


──ギィィィィィィン!


光線と絶壁がぶつかる。

不協和音を奏でながら、削り合う。


長い長い削り合い、その果てに──


パアァァン


──光線ご霧散する。


「いける!」


走りながら魔術の準備をする。

考える時間はない。

直感的に使う魔術を選択する。


眼前のコンコルディアに迫る。


ここからならいける!


魔術を展開する。

頭の中に湧いてでてきたイメージ。

それを、形にする。


「"すべてを、おしつぶせ【大いなる波ダイダルウェイブ】"!」


高質量の水が波となってコンコルディアに迫る。


「いっけえぇぇえ!」


コンコルディアは押し迫る波に抗おうとするが、弱体化してまともに体に力が入らなくなっている今、波には抗えず、飲み込まれ、押しつぶされていく。

だが、それでも攻撃をやめることはない。

最後までやつが一片すら残さず消滅するその時まで、攻撃を止めるな!


やがて、コンコルディアの抵抗も虚しく、消滅する。

それを見た私は魔術を止め、勝利を実感する。



対コンコルディア戦決着。


そして、私の意識は闇の中に落ちていく…。


























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る