第18話

それからは予想通りの毎日。


女子達に人気のないところに引きずり込まれては、

殴られたり、切られたり、

裸にされてペンで体中に落書きされたり。



その都度、あいつらに負けないように

殴り返したり、

噛み付いたりなどの反発はしていたが、

事が悪化するだけで、無意味だった。



サチさんとはなるべく合わないようにして

一緒に食べる夕食だけは

無理に明るく振る舞って

何も無い素振りを続けている。


なにせ、持ち物や制服への

表面的な嫌がらせはなくなってたので、

サチさんが気づくこともない。



そんな生活が1週間を過ぎて

もう限界を越してきている。








放課後、彼女達に見つからないように

ひとりで体育館に忍び込む。



部活ももう終わっている時間。



精神的ないじめから、

肉体的ないじめにエスカレートしてるということは

私も体力をつけて戦えるようにならなきゃ。


1対6が成立するくらい、

強くなってやる。



ジャージに着替えて

基本的な筋トレをひと通りやってから、

大きなマットを丸めて

殴ったり蹴ったりしてみる。



トレーニングなんてしたことのない私は、

ネットの情報だけで強くなれるのかな・・・。



やっぱり空手や合気道の護身術ジムとかに入会したり

した方が良かったかな〜



でもそれってやっぱお金かかるしな・・・




マットを見つめながらぼーっと考えていると、


「リア?ひとりでなにしてんの?」

と体育館の入口の方から声がして

見つかったー!と思って

焦って入口の方に目をやると…



「下校時間はもうとっくに過ぎてんぞ」


戸山先生だった。



鍵を手に持っていることから、

体育館を閉めに来たのだと考えられる。



「先生…」



「何やってんの、これ」



「あの…護身のトレーニング…を…」



「護身?痴漢対策とかか?」



先生はいつもの笑顔でそうおどけて言う。



「あーいやー…そんなところです…」



「外は物騒だし、女の子だもんなー」



物騒なのはこの学校です、先生。



「俺が教えよっか?」



「え?」



「俺の実家がボクシングジムなんだ」



「…そうなんですか!」



「親父がさぁ、俺をプロにしようと鍛えてくれてたんだけど、俺全然才能なくて、俺も期待に添えようと頑張ったんだけど…結局挫折して普通に大学でて教師になる道を選んだんだ」



「大変…だったんですね」



「でも俺、教師になって後悔してないよ!生徒は可愛いし、すげー楽しいし、人に教えるの結構好き!」



なんか…先生としては全然頼りなさそうだし、

年上だと思えないほど素直で無邪気な人だけど…


話せば話すほど、悪い人じゃない気がする。




私がいじめられてるから

護身を教わりたいなんて言ったら

先生どんな顔するかな…。




言えない・・・。

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