第24話 下駄箱

 少年は薄暗い廊下を歩きながら、期待と不安で吐き気を感じていた。




 何より気になっていたのは、ラブレターを下駄箱に入れるという、古典過ぎる方法しか思いつかなかった自分のセンスの悪さだった。



「手紙を読む以前に、そのことだけで手紙はゴミ箱行きの運命になるかもしれない。彼女ならそうしかねない」



 少年はそう思い、ひそかにため息をついた。





 アニメのキャラのようなくっきりとした顔立ちをして、人を見下したような話し方をするくせに、どこか孤独の影がつきまとう彼女。



 彼女のことを美人だという者は多い。



 けれど、彼女を好きだという者はいない。

 男子も女子も。




 たぶん、好きだと言わない者の半分は、意地で言わないのだろう。


 あんな高飛車な女、誰が好きだなんて言うか、という気持ちなのだろう、と少年は思っている。




 あとの半分の者たちは、拒否されるのが恐いのだろう。


 あるいは、「そう?」と冷たく言われるのが嫌なのだ。





 彼も拒否されるのが恐いクチだった。





 けれど、一晩かけて考え抜いて、決心したのだ。




 手紙を捨てられたって、笑われたっていい。


 気持ちを押し込めてうじうじしているよりはずっといい。


 とりあえず吐き出してしまえば、すっきりするに違いない。


 最初から振られる覚悟でやれば、傷も小さくてすむはずだ。


 変に思い詰めてしまう前に、告白してしまえ!





 そうして、今、2時間かけて書きあげたラブレターを、手にしているのだった。






 玄関は廊下よりさらに薄暗かった。



 ――まだ3時間目授業の後の休み時間で、多くの生徒が校内にいるというに、どうしてこんなに人気ひとけがないんだろう?

 まるで時間が止まっているみたいだ。




 彼はそんなことを考えながら、彼女の下駄箱を探した。





 彼女の下駄箱は意外にも一番下の段だった。




 彼女だけ特別扱いされるはずはないことはわかっていたけれども、彼女が床に屈むようにして靴を出し入れするなんて考えにくかった。





 少年は気を取り直して、下駄箱の蓋に手をかけた。




 そして、息をふっと吐き出すと、思い切ってそれを開けた。








 下駄箱の中に靴はなく、青白い人魂が浮かんでいた。

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