第7話 いざ、決行☆
「ひゃー! ここに来るのも久しぶりだねぇ」
「遊びに来たんじゃないからな」
4月30日午後10時30分。わたしたちは、スカーレットビルの近くのカフェにやって来ていた。
窓際の席に座って、スカーレットビルの出入り口付近を確認する。
この時間だと高校生は補導されかねないので、スーツを着て大人っぽく変装している。
変装してるけど、ここからまた変装する予定だ。
「ましろ、ちゃんと仕事してるか?」
「してるしてる。……あ、あの2人じゃない?」
ちょうどスカーレットビルから出てきた、30代くらいの男性2人組を指差す。彼らはこのビルで働いている会社員だ。
わたしのひとつ目の仕事は、あおいが事前に目星をつけていたあの人たちを見つけ出すこと。
わたしとあおいは、カフェを出てその2人組に近づいていく。
ビルの中に入るには、彼らの持っているIDカードが必要だ。
「……よし、今だ」
「おっけー」
あおいの合図で、わたしはひとりの男性の首筋に向けて睡眠薬を発射する。この睡眠薬は即効性だ。
「あっ、おい、大丈夫か!?」
いきなり崩れ落ちた人を慌てて支える男性の横に気配を消しながら移動して、睡眠薬を打ち込んだ。
そのまま、介護するふりをして防犯カメラのない路地裏に入り、男性たちを寝かせる。
「ほんと、すみません! 社員証とIDカード、ちょぉっとお借りします」
一応断ってから、胸ポケットを探ってカードを取り出す。そのまま、わたしたちは家から持ってきた目の前にいる男性の顔をしたマスクをかぶった。
「ましろ、これ」
「え、なに……あ、これ通信機!?」
「ああ。骨伝導式だから口を閉じてても喋れる」
一見するとイヤホンのような形をしているけど、骨伝導式ってことはこめかみあたりに着けるのか。
「一応聞くけど、これもあおいが……」
「おれが作った。ちなみに録音機能がついていて録音すれば他人の声も出せる。骨伝導は骨に振動を送って音を出す仕組みだから」
「OK。わかった、一回ストップ」
あおいの解説を手で遮って、服装の最終確認に入る。
その顔であおいの声で喋られても、違和感しかないって。
「じゃ。行きますか」
左耳にあおいと連絡をとるための通信機をつけて、スカーレットビルの中に入る。
エレベーターで20階まで行くと、円形のロビーに出る。
駅の改札のように、さっき抜き取ったカードをかざすとすんなり中に入れた。
中にいる人は、まばらだ。変装しているので怪しまれることもない。
このビルが完全に閉まるのは、午後11時。今は午後10時45分だから、あと15分は待機だ。
再び、エレベーターで25階まで昇って会議室のようなところに入る。
外から入ってこられないように鍵をかけて、ばっと着ていたスーツとマスクを脱いだ。
「マスク、思ったより暑い! スーツも制服並みに肩凝るよ〜」
「今夜は気温も高いしな。4月とは思えないくらい」
これも、地球温暖化の影響なのかな。昨日も、いきなり夕方になってゲリラ豪雨が襲ってきたんだ。
スーツは重くて暑かったけど、下に着ていたスパイスーツのような服は、通気性ばっちりだ。
「でも、これすっごく動きやすいね! 服も作れちゃうなんて、さすがあおい」
「お前は、裁縫できなさすぎだけどな。まあ、プロに手伝ってもらったからできたんだけど」
「プロって、あおいの
「正解。最近、『ボクはテキスタルデザイナーにもなったんだよ』とか言ってたけど」
「てきすたるでざいなー?」
「主に、布地(テキスタル)のデザインをする仕事のことだ」
「へぇ、そうなんだ! それってすごい!」
服と布って、似てるようで違う知識がいるはずだよね。たしかわたしたちと同い年で既にプロって言ってた気がするし……え、あおいの家系ってなんでそんなにすごい人ばっかなの?
「最終確認だ。プランは、頭の中に入ってるよな?」
「もちろん。じゃあ、あおい、いくよ!」
わたしは、拳を突き出した。
あおいもすぐに理解したらしく、コツっと拳をぶつけ合う。
小さいときから、なにかをするとき。わたしとあおいは、グータッチのサインをするんだ。
「「
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