第3話 人ってなかなか変わらないけど、きっかけがあれば変わったりもする
約束通り、家に帰ってから慎哉に、おすすめの恋愛ものの少女マンガをいくつか教えた。
恋愛に前向きで、あまり刺激が強くなくて人気があるものばっかり選んだ。
作品名、作家名、そして簡単なあらすじと、おすすめポイントも添えた。
確認のため聞いてみたら、
それから毎日のように、彼がマンガを読むたびに、簡単な感想が届いた。
アニメ化されてるものは、アニメの感想が届いた。
少女マンガを、新鮮に楽しんでるのが伝わってくる。
好きバレして、どう接していいか困ってたから、少女マンガの話題で盛り上がれるのはちょうどよかった。
他のおすすめマンガも教えてって言われて、追加で教えた。
彼が少女マンガを気に入ってるのがわかる。
⭐︎
12月になって、『街づくり概論』の授業で発表の順番がきた。
授業の発表は、智也や朋子も一緒に準備をして無難に乗り切った。
⭐︎
発表の後に、4人で表参道の駅に近いレストランで食事をした。
お疲れさま、みたいな意味合いで。
大学生っていうと、飲み会が多そうだけど、そうでもない。
やろうって話題がよく出る割に、本当に飲み会が実現することって少ない気がする。
ゆっくり食事した後に、朋子は授業のため大学へ戻った。智也はバイトが入っていて渋谷へ向かった。
私と
好きバレしてから、直接で会って2人だけで話すのは初めてになる。
⭐︎
再来週はいよいよクリスマス本番で、街の雰囲気も最高潮に盛り上がってきてる。
原宿の街も、ファッションレーベルやカフェや個性的な店まで、様々に
ウィンドウショッピングだけでも満足度は高い。
5時すぎて既に日が暮れていて、街が
2人で歩いてるだけで、幸せな気持ちに
食事会の流れなので、話題も自然に街のことになる。
「もう一度、六本木へ出かけたくない? この間は11月になってすぐで時期はずれだったけど、クリスマス直前でどうなってるか見てみたい」
「これから行く? 六本木ならそれほど遠くないよね」
「今日だと、もう遅いから違う日がいいな。来週はどう?」
「うん、いいよ」
私も、来週また一緒に出かけられたら嬉しい。
「それでさぁ……、制服ってまだ持ってる?」
「高校の制服? もちろん持ってるけど」
「少女マンガ読んでたら、制服いいなあって思ってさ」
「でしょ! 制服いいよねぇ」
「
「それって、着て来て欲しいってこと?」
「……うん」
「家帰って試してみるね」
「期待してる」
「無理だったらごめんね」
そんなわけで
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
クローゼットの奥の方から、高校の制服を引っ張り出す。
当たり前だけど、卒業してから
お気に入りのブレザータイプの制服。
白のブラウスに、チェックのフレアスカート。
ウチの高校は、リボンがセットじゃない分だけ制服っぽさが少し減ってる。
クリーニング屋さんのタグを外して、制服を着てみる。
12月で、朝は寒くなってるけど、日中ならまだそれほどじゃない。
コートを上に着たいとこだけど、それじゃ制服ぽさが出ないので、セーターとマフラーだけにする。
鏡を見ると女子高生の私がいる、と言いたいけどちょっと違和感がある。
大学生になって、髪を明るめに染めるようになったから、そのせいだと気づく。
メイクがいつもの通りだと、コスプレっぽくなっちゃいそう。
元からそんなに濃いメイクじゃないけど、なるべくスッピンぽい方が合うはず。
生足に
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
当日になって、待ち合わせてる六本木のカフェに向かう。
午後3時過ぎで、もうかなり太陽が
待ち合わせに遅れるなんて珍しいけど、先に連絡があるのは慎哉らしい。
来週がクリスマスになって、雰囲気が盛り上がってる。
この間は11月の上旬だったから、まだクリスマスには時期はずれだった。
カフェのこの間と同じ席に、慎哉の名前で予約が入れてある。
やっぱりこの場所いいなあ。
発表のために調べたせいもあって、この街へ愛着が
⭐︎
慎哉が少し遅れて来る。珍しく全身が
確かにテラス席なのでその方がいい。この間はちょうど良い気温だったけど、今日だとテラス席は少し寒い。
でも
「待たせてごめん」
慎哉がそう言って、コートを脱がずに席に座る。
「ううん」
「制服、かわいいね」
「そう」
「うん。今まで制服にこだわりなかったんだけど、少女マンガ見てたら女子高生の制服っていいなって思うようになった」
「そうでしょ! やっぱ制服いいんだって」
制服好きの私は
慎哉が店員さんに飲み物を注文する。
「少女マンガ気に入ったみたいね」
「すげえ気に入った! なんか世界が広がった感じする。男のキャラとか違和感あったりするんだけど、女の子ってこんなこと考えてるのかぁ、っていうのすごく面白かった」
「少女マンガもそうなんだけど、これまでの
私も素直に
「
「それでさ……」
慎哉が言い
私が彼の顔を
「ん?」
慎哉が
「俺も恋愛したくなった」
「それって……」
「うん、
私も
「うん、私も付き合いたい」
慎哉がコートを脱ぐとブレザーを着てる。
「それ……」
「うん。制服」
私が制服デートをしたいって言ったのを、覚えていてくれたんだ。
私が慎哉に聞く。
「ねぇ、これってデートなの?」
慎哉は照れながら
FIN
お読みいただいて、ありがとうございます!
この物語で、楽しい時間をすごせたり、明るい気持ちになっていただけたら幸いです
もし少しでも気に入っていただけて、☆☆☆やフォローいただけたら、すごくすごく嬉しいです!
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