穏やかな日々...

第33話

「ありがとうございました。」

真田未央奈は、頭を下げた。


「こちらこそ、楽しかったです。」

直江かりんが言った。


「また、いつでも来て下さいね。」

上杉史緒里が言った。


━━越後地区春日山女学院前。


未央奈は、一ヶ月の春日山女学院での生活を終えて、学校を後にするところだ。

ここでの生活で、未央奈はすっかり二人に懐いてしまった。


史緒里からは、トロンボーンを教わったり、かりんからは将棋を教わったりした。


さすが越後地区というぐらい、ご飯も美味しかった。


「次はどうするの?」

と、かりんが訊いた。


「大坂女学園に行きます。」

と、未央奈は答えた。


「気を付けてね...。」

史緒里は、涙を浮かべていた。


「ありがとうございます。」

未央奈も涙ぐむ。


「二人共、泣いてるんですか?」

と言った、かりんも涙ぐむ。


そして、三人は手を合わせた...。



━━安芸地区吉田郡山女子高天守。


「まあや様」

と、家臣が声をかけて来た。


「どうしたの?」

まあやは、家臣を見た。


「石田絵梨花様がいらっしゃいました。

応接室にて、お待ち頂いております。」

と、家臣が答えた。


「すぐに行くわ。」

と言って、まあやは応接室に向かった。


「お待たせ致しました。」

まあやが挨拶をした。


「いいえ。」

絵梨花は返事をしてから、

「何か困ってる事とかは、ございませんか?」

と、訊いた。


「はい、特に問題ございません。

絵梨花様のおかげです。」

と、まあやは答えた。


絵梨花は一年生で、まあやは三年生であるが、絵梨花は豊臣麻衣の家臣なので、敬語で話している。


それに、まあやは絵梨花に感謝しているのだ。

まあやが降伏する際に、まあや達の待遇が悪くならないように、上手く間を取り持ってくれたのが、交渉役の絵梨花だった。


まあやだけでなく、薩摩地区内女子高の島津怜奈も同様に降伏の際、絵梨花が上手く取りまとめてくれた。


絵梨花は優しい性格なので、出来るだけ降伏した側が困らないように、色々と麻衣に働きかけてくれていた。

麻衣も、別に待遇を悪くしたい訳ではないので、積極的に絵梨花の意見を取り入れた。


その為、まだ一年生ではあるが、降伏した大名達から慕われていた。


━━今日は、待遇などで問題ないかを聞きに来てくれたようだ。



━━数日後。

未央奈は、大坂女学園に来ていた。


「宜しくお願いします。」

未央奈は、頭を下げた。


「未央奈、久し振りね。」

と、大谷沙友理が出迎えてくれた。


「お久しぶりです。

麻衣様や、絵梨花様もお元気ですか?」

と、未央奈は訊いた。


「ええ、おかげ様で。」

と、沙友理が答える。


━━突然、

「未央奈さん、私の事を忘れてるー。」

と、声がした。


未央奈は、声のした方を見た。

「じゃーん!」

と、言いながら顔を出してきたのは、

━━豊臣蓮加だった。


「あ、蓮加様。」

と、未央奈は頭を下げて、

「忘れてませんよ。」

と言った。


「だって今、私の名前が出なかったもん。」

と、蓮加はふくれた。


「申し訳ございません。

こちらにいらしてるとは、知らなくて。」

と、未央奈は謝った。


「そうだよね。

本来、中学生がいる所じゃないし。」

と、蓮加は微笑してから、

「沙友理さん、私達で、未央奈さんに大坂女学園をご案内しましょう。」

と、沙友理に言った。


「かしこまりました。

では未央奈、行きましょう。」

沙友理は、未央奈を促した。


「はい。」

と、未央奈は返事をした。


そして、三人は校舎の中へと入って行った。



━━三人が廊下を歩いていると、美しいピアノの

音色が聞こえて来る。


「うわぁ、上手い!!」

と、未央奈は感激している様子。


「あ、あれは、絵梨花よ。」

と、沙友理が答えた。


三人は、ピアノの音がする音楽室へと向かった。

絵梨花がピアノを弾いていた。

滑らかな指の動きが奏でる、繊細で優しいメロディー...。

しばらく、三人は聴き入っていた。


━━演奏を終えた絵梨花が、三人に気付く。


「あ!! 未央奈、久しぶりー。」

と、絵梨花が笑顔になる。


「お久しぶりです。」

と、未央奈は頭を下げた。


「小田原攻め以来かな?」

と、絵梨花が訊く。


「はい、小田原以来です。」

と、未央奈は答えた。


「絵梨花さん、相変わらずピアノ上手。」

と、蓮加が言った。


「ありがとうございます。」

絵梨花が、頭を下げた。


「何という曲ですか?」

と、未央奈が訊いた。


「今のは、ショパンのエチュードよ。」

と、絵梨花が答えた。


「?...ショパンの...エッチなやつ...?」

未央奈は、首を傾げた。


未央奈以外の三人は笑い出した。


「あんた、どういう耳してんのよ!」

呆れる、絵梨花であった...。


大きな戦もなくなった...。


こんな穏やかな日々が、ずっと続けばいいと願う四人であった...。

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