観音寺の出会い

第23話

織田佑美は、近畿(きんき)一体を支配する大名になった。


そして、南近江地区の観音寺女子高を大改修して、壮大な学校を作りあげ、名前を安土(あづち)女学園と改めてた。


《豪華絢爛(ごうかけんらん)》という言葉が似合う学園だ。



━━安土女学園天守。


「麻衣!!」

佑美は、麻衣を呼んだ。


「はい。」

麻衣が佑美に近付いて来た。


「麻衣に、北近江地区を任せようと思う。」

と、佑美が言った。


「えっ!?」

麻衣は目を丸くして、

「よろしいんでしょうか?」

と訊いた。


「うん、小谷女学院は、麻衣の好きなようにすればいいよ。」

と、佑美が言った。


「有難うございます。」

麻衣は、深く頭を下げた。


次に、

「玲香!!」

佑美は、玲香を呼んだ。


「はい。」

玲香が佑美の所へ来た。


「玲香には、丹波(たんば)地区を任せようと思っている。」

と、佑美が言った。


「有難うございます。」

玲香が返事をする。


そして、玲香は天守を出ていった。

天守を出た後、玲香は自分の胸に手を当てた。

(佑美様と離れる...そう思った途端に、胸が締め付けられるようになるのは...何故?)



━━数日後。


麻衣は、小谷女学院を大掛かりな改修工事をして、《長浜(ながはま)女学院》へと改名した。


━━ある日、麻衣は自分のバイクで、長浜女学院から安土女学園方面へツーリングをしていた。


その帰りに北近江地区で、レストランに立ち寄った。

名前は、《レストラン観音寺(かんのんじ)》。


そこで、麻衣はハンバーグセットを頼んだ。

入店してすぐに、アルバイトの女の子が、お茶を出してくれた。


大きめのコップに冷たいお茶が入っていた。

「有難う。」

6月で暑くなって来ていた麻衣は、一気に飲んだ。

喉が乾いていたので、冷たいお茶は有難い。


しばらくすると、ハンバーグセットが麻衣の所へ運ばれて来た。


そして、

「お茶をどうぞ。」

先程の女の子は、麻衣にお茶を出した。

今度は、先程のコップよりは小さめのカップで、やや熱いお茶が半分くらい入っていた。


麻衣は食事をしながら、それも飲んだ。

ご飯を食べながら飲むには、丁度良い温度と量だ。


「お茶をどうぞ。」

麻衣が食べ終えた頃、その女の子は、三杯目のお茶を運んで来た。

高価な湯飲み茶碗で、熱々のお茶がほんの少しだけ入っていた。


それも、麻衣は飲んだ。

食後にホッとひと息つくには、丁度良い温度と量だった。

お茶を出すタイミングも絶妙だ。


三杯のお茶の違いを、不思議に思った麻衣は、


「ちょっといいですか?」

と、麻衣はその少女を呼んだ。


「はい。」

と、その少女は麻衣の所へ来た。


肩までの黒髪ストレートが、良く似合う美少女だ。


「私の所に運ばれて来たお茶が三杯とも、量や温度が違うのは何故?」

と、麻衣は訊いた。


「はい、ご来店された時に、とても暑そうでしたので、先ずは冷たいお茶をお出し致しました。」

と、その少女は答えた。


「次は?」

と、麻衣が訊く。


「はい、お食事と一緒にお召し上がり頂く為、少し熱めのお茶をご用意致しました。」

と、少女は答えた。


「では、三杯目は?」

と、麻衣が訊いた。


「はい、お食事の後に、ごゆっくりとお過ごし頂きたく、熱めのお茶をご用意致しました。」

と、その少女は答えた。


その神対応に感心した麻衣は、


「お名前は?」

と、名前を尋ねた。


「北近江地区佐和山(さわやま)女子高等学校一年、石田絵梨花(いしだ・えりか)と申します。」

と、その少女は答えた。


「《えりか》、いい名前ね。」

と、麻衣は言った。


「有難うございます。」

と、絵梨花は言った。


「私は長浜女学院二年生の羽柴麻衣。

最近、長浜女学院を任されるようになったの。」

と言った。


「北近江の大名の方ですか?」

と、絵梨花は驚いた。


「うーん、私は織田佑美様の家臣だから、大名とは違うかなぁ...。」

と、麻衣は言った。


「でも、長浜女学院ではトップですよね?」

と、絵梨花は訊いた。


「うん、一応ね。」

と、麻衣は答えた。


「そんなお偉い方とは知らず、失礼致しました!!」

と、絵梨花は深く頭を下げた。


「全然、悪くないわよ。」

麻衣は言ってから、少し間を置いて、

「お願いがあるんだけど...。」

と訊いた。


「は、はい、なんでしょうか?」

絵梨花は、背筋を正した。


「あなたの力を、私に貸してくれないかしら?」

と、訊いた。


「えっ!?私の力ですか?」

と、絵梨花は目を丸くした。


「ダメかしら?」

と、麻衣は絵梨花を見た。


「━━私なんかでよろしいのでしょうか?」

と、絵梨花は麻衣を見た。


「あなたがいいの。」

と、麻衣は微笑した。


「かしこまりました。」

絵梨花は頷いた。


━━羽柴麻衣家臣、石田絵梨花の誕生である。

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