三河から来た美少女

第5話

━━清州女子高天守。


「佑美様。」

麻衣が、近付いて来て声をかける。


「ん?」

佑美が麻衣を見る。


「三河にて、動きがあったようです。

数千人程の生徒が、尾張地区方面へと向かって来てます。」

と、麻衣が言う。


「━━今川か...?。」

佑美が答える。


「おそらく...。」

麻衣が言う。


「麻衣、尾張と三河の地区境まで向かおう。」

佑美が言った。


「かしこまりました、すぐに準備致します。」

そう言って、麻衣は天守を出ていった。


(ここまで来たらやるしかない...。)

佑美は、心に決めていた。


━━そして有能な麻衣は、やはり違った。


『斎藤愛未様

織田佑美家臣の羽柴麻衣です。

三河より尾張方面へ、今川勢らしき軍の侵攻がございます。

愛未様のお力を、お借りする事になるかも知れません。』


佑美からの戦の準備の命(めい)を受けたあと、天守を出てすぐに、愛未にメールを送っていた。


『麻衣

援軍の件、了解した。

何かあればすぐに連絡して。』


すぐに、愛未からの返信があった。


それから、三河地区との境にある学校に連絡をして、戦の準備を進めた。


━━尾張地区と三河地区の地区境。


佑美達は、今川の軍を迎え撃つべく待機していた。


━━しばらくすると、遠くから車やバイクの音が聞こえて来た。


この時代、女子高生の間で、あるルールがあった。

それは、車とバイクに関するルールだ。

一年生は、原付バイクにしか乗れない。

二年生は、原付バイクと自動二輪車に乗れる。

三年生は、原付バイクと自動二輪車の他に、車も乗れる。

勿論、免許を取得している事が条件ではあるが...。

そして学年に関係なく、小名や大名になれば車も乗れる。

しかし、十八歲にならないと車の運転が出来ない為、運転免許を持っている三年生の家臣に、運転してもらう必要がある。

そして、それぞれの大名にはチームカラーのような色がある為、車体の色は、基本的にその色で統一されている。

更に一般の女生徒は、その地区の大名や小名と同じ車やバイクに乗ってはいけない。

ちなみに佑美の車は、黒の日産・シーマ450VIPである為、尾張地区の女生徒は、色とかに関係なく、シーマに乗ってはいけない。

羽柴麻衣は、まだ二年生で車の運転が出来ない為、自動二輪車に乗っている。

車種はカワサキNinja 400Rで、色は黒である。


━━やがて、オレンジを基本とした色の車やバイクが近付いてきた。

今川美波のカラーがオレンジなので、今川系の軍勢で間違いないようだ。


その中心にオレンジの三菱ランサーエボリューションIVがあった。


その車が佑美達の前で止まると、後部座席から一人の美少女が降りて来た。

茶髪のストレートが良く似合う、スラリとした美少女だ。


「今川美波家臣、岡崎(おかざき)女学院二年、松平七瀬(まつだいら・ななせ)である!!」

と、その美少女は名乗った。

七瀬は、二年生であるが車で移動している。

つまり、小名か大名である。


佑美は、しばらく松平七瀬を見てから、


「━━七瀬?」

と口を開いた。


七瀬も、しばらく佑美を見て、

「ゆ...み...さん?」

と言った。


「なんだ、七瀬か。

久し振り。」

と、佑美から笑みがこぼれた。


「はい、お久しぶりです。」

と七瀬も笑顔になる。


「佑美様の、お知り合いの方ですか?」

と、麻衣が訊いた。


「うん、七瀬は私の幼馴染で昔、尾張地区に住んでいたんだ。

確か、私が小学校二年の時に引越したから、十年振りぐらいかな?」

と言って、佑美が七瀬を見る。


「はい、十年振りくらいです。

まさか、こんなところで佑美さんに会うとは...。」

と七瀬。


「なんか七瀬とは、やり合う気になれないなぁ...。

━━麻衣、今日は帰ろう。」

と、佑美は言った。


「かしこまりました。」

と麻衣が答える。


「七瀬、今度ゆっくり話そう。」

そう言って、佑美達は引き上げた。


「━━私達も戻りましょう。」

と、七瀬達も戻っていった...。

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