第18話

「知也様。こちらの方は…」


 体を離してくれた先輩はにこやかに紹介してくれた。


「友達の瑠海だよ。最近知り合ったんだ」

「そうでしたか。わたくし、知也様の運転手兼執事の牧田と申します」


 左胸に手を当て頭を下げた。


 うん。ですよね。わかります。

 自分の主君がこんなひとと友達って、にわかに信じられないよね。


 私が牧田さんの立場でも疑うもん。


 有難いことに私はハニートラップなるものを仕掛けられるほどの美女でも、美貌の持ち主でもないため、あらぬ誤解はされずに済む。


「って、え!?私、先輩の友達なんですか!?」


 聞き流すにはあまりにも衝撃な単語。


 いつから友達になったんだろ。


 一緒にクレープ食べた。一緒に帰った。



 どれだろ。



 友達の定義は色々とあるけども。私達は高島先輩という共通の知り合いがいるだけの関係性。


 かろうじて。学校の先輩後輩ってだけ。

 それ以外に私達を表すものはない。


 私が真剣に考えている間に、先輩は笑顔のまま車に乗り込んだ。


 ───また、からかわれてるだけかな。


「瑠海」


 後部座席の窓が下がり先輩を顔を出した。


「おやすみ」


 ほんの一瞬魂が抜けた。


 幻聴じゃないよね?


「っ…おやすみなさい!」



 声が大きくなってしまうくらい嬉しかった。本当に。


 言ったのも、言われたのも、ずいぶん前のこと。

 遠い記憶の彼方。


 それも家族ではない人にだ。それが余計惨めにさせる。







“私を”

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