消えた幼馴染み
第18話
「濂?どうした?変な顔して。あ、俺、いつものコンビニで降ろして下さい。」
移動車の中。
一番後ろに座る俺をみながら、俺の前に座った凛。
「まだ愛ちゃん具合悪いんだ?」
「いや、明日から学校行くって。」
「良かったじゃん。で、その変顔はなにゆえ?」
「桃だよ。」
「は?」
「分かんねぇんだよ。何で今更桃なわけ?」
「桃?」
「桃ってあの桃だよな?」
「桃太郎の桃なんじゃねぇの?」
「だよな。」
「桃、好きなんだ?」
「でぇっきらい。」
「お前じゃなくて、愛ちゃん。」
「あぁ、そっち?いや、嫌いだと思ってたんだけど………好きらしいよ。全然知らなかった。」
「全然?」
「全然。」
「ふぅん。」
凛が意味ありげに笑って前を向いた。
桃が好き?
俺と同じで桃は嫌い。
だと思っていた。
なんだ?意味が分かんねぇ。
熱でおかしくなったか?
この時、いつものように
「桃なんか食えるか!ば~か!」
ってあいつの頭を小突いで笑ってれば良かったのかもしれない。
「ずっと熱だしてろ。」
そう言って、おでこに氷をのせてふざければ良かった。
それをしなかったから……
俺は、『桃』を忘れた。
忘れてしまった。
忘れたまま、忙しい日常………芸能界という非日常に溺れていった。
愛………?
俺は、忘れたまま、お前のことも忘れたんだろうか。
お前が側にいない日常が普通になればなるほど、俺は、忘れたことすら忘れたことにしていったんだ。
華やかに見える世界には、沢山の嘘や見栄や思惑が渦巻いていた。
俺は、それに負けまいと必死だった。
RAINBOW のメンバーとして、絶対に負けるわけにはいかなかったんだ。
だから、忘れた。
理由にならないけれど、必死だったんだ。
愛
お前が、桃が好きだと告白したのは、俺がいなくても大丈夫だということだったのかな。
メロンがなくても大丈夫だということだったのかな。
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