敵の名はクリシュナ

【そこにバララーマも居たんだね】

クリシュナがゴーピー達と過ごしていた夜、それは来た。



「兄さんも踊ったらどうです?」



「俺はいいよ。お前の警護が俺の使命だ。」



気を抜かず、周囲を見張るバララーマ。



「アナンタってば真面目ですね。少しくらい楽しめば良いのに。」



「今の私はバララーマですよ。ヴィシュヌさんもクリシュナになりきって下さい。」



「えー……。やっぱりつれないですね。はぁ……。早くこの身体と寝たい……。」



バララーマの身体に指を滑らせ、クリシュナがつぶやく。



「クスッ、ちょっと危険な台詞ですね。天界に戻ったらゆっくり寝て下さい。」



アナンタベッドが恋しくて堪らない。



「アナンタ~……」



兄のバララーマに頬ずりするが、違和感がある。



「ひんやりしてない……。兄さん、体温高すぎです。」



「これが普通の体温だろ。」



兄さんと呼ばれた事で、アナンタはバララーマになりきる。

笑ってクリシュナの頭を撫でていると、ゴーピー達の悲鳴が聞こえて来た。



「キャーッ!悪魔よ!悪魔が来たわ!」



ヤクシャの悪魔サンクアスラがゴーピー達に襲いかかる。

その悲鳴を聞き、クリシュナがサンクアスラを追った。



「私のハーレムを襲うなんて!許しませんよ!」



ぅおい!

口に出しちゃ駄目だよヴィシュヌさん!



「もとい!か弱き乙女を襲うなんて!許しませんよ!」



そう!それでOK!

行け!クリシュナ!



「ギャアアアアッ!」



首をバッサリ切り落とされ、サンクアスラは倒された。



また別のある日には、牡牛悪魔が攻撃を仕掛けて来た。


牡牛悪魔が襲ったのは家畜の群れ。

逃げ惑う牛達と、牛飼いの男女。



突進して来る牡牛悪魔の前に、我らがクリシュナ様が立ちはだかる。



「どっせーいっ!」



変な掛け声と共に、ガシッと牡牛悪魔の角を捕らえた。


突進する牡牛悪魔と、押さえ込むクリシュナ。

踏ん張る牡牛悪魔だが、クリシュナの怪力には敵わない。



「せいっ!」



ゴキリッ!


鈍い音が鳴り響く。

力を失い崩れ落ちる牡牛悪魔。


だらりと垂れた頭。

首をへし折られた牡牛悪魔は、あっけなく倒されてしまった。

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