【怪力がすぎる】

「とりあえず嵐をやり過ごさないと。」



と、肩をコキコキ指をポキポキ準備運動をする。



「さてと。」



ゴーヴァルダナ山の麓に立ったクリシュナが、「ていっ」と地面に手を突き刺した。



「よいしょ。」



ズゴゴゴゴ……


大きな地響きと共に持ち上がる山。

それを頭上に掲げ、クリシュナは言った。



「皆さん、この下に避難して下さい。この山を傘にして嵐をやり過ごします。」



山を持ち上げてるにも拘わらず、涼しげな顔。

何ともスケールのでかい神通力である。


まあとにかく、山の下に避難した人々や牛は、嵐が過ぎ去るのをじっと待っていた。



「クリシュナめ~。ふんっ、何日持っていられるか見ものじゃわい。」



天界から覗き見したインドラがニヤリと笑う。


それから7日間、嵐を見舞った。

だが、その頃には気付いていた。


クリシュナの正体を思い出していた。



「うぬぅ……。まずい……。すっかり忘れておったわ……。」



しかし……。

やめるタイミングがつかめない。

どうしたものかと悩むインドラの耳に、友の声が聞こえて来た。



〔いい加減にしないと縁切りますよ。〕



うおぅ!

い、今がやめ時じゃ!



慌てて嵐をおさめ、謝罪に向かう。


白象アイラーヴァタと聖牛スラビを伴い、インドラが下界に降りた。



「すまんかったヴィシュヌ!おぬしだという事を忘れとったんじゃ!許してくれい!」



「えー……忘れてたんですか……。という事は私だと知らずに攻撃を……。うん、それなら許しますよ。やだなー、本気で嫌われたかと思ったじゃないですか。」



ふふっと微笑むクリシュナ。



「いや、ほんとすまんかった。おぬしだと分かっておったら攻撃なぞせんかった……。」



「ですよね~。友に攻撃するなんて有り得ませんよね~。ふふ、この埋め合わせは天界に戻った時にしてもらいますからね。」



「おう。ソーマ酒を飲みながらな。おぬしが満足するまでもてなしてやるわ。」



「はは、楽しみにしてますよ。」



こうして和解した二人は、天界での再会を約束して別れた。



ってのは創作で、本当は7日間の様子を見たインドラが敗北を認めます。


で、下界に降りてクリシュナに謝罪して、彼を崇拝したそうです。

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